ハロウィーン翌日の11月1日、長谷部健渋谷区長が報道陣の取材に応じ「静かな朝を迎えられた」と振り返った。
一部の来街者らによる犯罪・迷惑行為などが社会問題にもなっていたハロウィーン期間の渋谷。コロナ禍でインバウンドも回復し、昨年は韓国・ソウルの梨泰院でハロウィーン前に雑踏事故も起きたなか、区は例年より早い9月12日に対策を発表。「渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません。」という強いメッセージで来街を控えるよう繰り返し呼びかけきた。
今年も例年同様、10月27日~31日の夕方以降は路上飲酒を禁止する条例を施行。同28日~31日には、昨年よりも人数を増やして民間の警備員(延べ370人)と区の職員(同27日~の5日間で同180人)による路上滞留抑制や路上飲酒の注意、ごみ拾いなどを行った。警察は駅周辺の警備に加え、広範囲に検問を設置し、改造車・爆音車の侵入を抑えたとう。
ハロウィーン当日の31日は、渋谷センター街の路上にいた来街者の推計が最も多かった22時ごろで約1万5000人。コロナ禍前の2019年のピーク時の約4万人、昨年のピーク時の約2万3000人より減少した。来街者の「約7割」が外国人で、仮装者も外国人が中心だったと見ている。「何もしなければ」6万人程度を見込んでいたなか「ハロウィーン目的での来街は控えていただいた結果だったと思う」(長谷部区長)は手ごたえをうかがわせ、「ご理解ご協力いただいた」と感謝の言葉を口にした。
今年は、ハチ公前広場の通行の流れを「きれいにつくりたかった」ことなどから、警察の指導で忠犬ハチ公像の周辺に仮囲いを設置。JR渋谷駅への出入りをそれぞれ一方通行にした。区立宮下公園や渋谷センター街のマクドナルド、宇田川交番周辺に滞留する人たちは見られたというが、動線を整備したことで「少し分散した」と考える。
路上飲酒の注意件数は5日間計526件(昨年は4日間で415件)だったが、知らなかったという人や声をかけたらやめるなど「だいぶ抑えられた」。前輪を浮かせて走行していたバイクがタクシーと接触する事故はあったものの、「大きなトラブル」や逮捕者の報告はなく、路上飲酒を抑えられたことを「大きな要因」として挙げた。缶ビールを販売していたコンビニエンスストア1店舗を除き、39店舗は酒類の自粛販売に協力したことも功を奏した。
対策の予算は施行額で約4,800万円を計上していたが、警備費と海外向けの動画制作費が増え最終的に8,800万円程度になる見込み。「渋谷の安心安全を守ることは当然の責務であり、区民にとってもこのエリアの安全は大切なことなので致し方ないが、むやみに区税を投入することは当然避けたい。ご協力いただける民間企業など含めて、いろいろなやり方もあるのでは」と課題に挙げた。
対策を発表した9月12日から10月30日までに、ハロウィーンに関する問い合わせは197件。区のメッセージに賛同する声や罰則強化を求める声、イベントの実施を求める声、「自由を奪わないでほしい」という声などさまざま集まったという。
SNS上でも対策に批判の声もあった。長谷部区長もかねて「若者のエネルギーをポジティブなものに変えたい」と考えていたが、軽トラックを横転させる事件も起き、「大きな迷惑を被っているのが事実」。渋谷区観光協会を中心に代々木公園でイベントを開催した年もあったが、「結局渋谷(駅周辺)に人が戻ってきてしまった」ことなどから「正解が難しい状況」と話す。
来年以降については、「渋谷の街に来ないでくれというメッセージは、区長として言いたいメッセージではないので、いろいろな意見を聞きながら考えていきたい。渋谷は何でも禁止する街でもないし若い人たちを排除する街でもない。いろいろな人が混じり合い・認め合いながら新しい価値・文化を発信してきた街なので、そういうエネルギーは生かしていきたい」としつつ、「渋谷の公道がハロウィーン会場ではないということは(言い)続けていきたい」と話した。
年末年始も来街者が増えるタイミングとなる。過去には地元商店街や区などが構成する実行委員会が渋谷駅前でイベントを開催していたこともあるが、昨年度に引き続き本年度もスポンサーが集まらないことなどから中止が決まった。当日の警備等に関しては今後検討していく。