国立競技場に隣接する「都立明治公園」が再整備を経て10月31日、拡張・リニューアルオープンした。既存の園にはなかった芝生の広場や渋谷川をモチーフにした水路、性別を問わない「オールジェンダートイレ」などを整備し、近隣住民ら年間250万人の利用を見込む。
1964(昭和39)年に開かれた1度目の東京オリンピック開催に合わせて整備・開園された明治公園が、2度目の東京五輪開催に伴う一帯の都市再生プロジェクトの一環で大きく姿を変えた。都立公園で初めて、民間事業者を公募・選定し飲食店などの施設を設けて得た収益を活用することで園全体の整備・運営などを一体的に行う「Park-PFI」事業を採用。三井物産や西武造園、読売広告社ら6社から成る「Tokyo Legacy Parks」(中央区)が指定管理者となり、再整備を進めてきた。今後約20年にわたり、園の維持・管理も担う。
広さ約1000平方メートルの芝生広場「希望の広場」は園のシンボル的位置付け。耐圧仕様の天然芝を採用し、Rのかかった長いベンチやデッキが周りを囲む。緩やかな勾配を付けることで通りからも緑が見えるようにしたという。外苑西通りに面した「みち広場」は、従来のブロック積み擁壁を撤去し、園路や渋谷川を想起させるせせらぎ、草土手などを整備。春には植樹した13種類の桜が広場を彩る。せせらぎは、夏季はミスト噴射として子どもが遊べるように別途整備する予定。
園を奥に進むと広がるのは、約7500平方メートルの樹林地「誇りの杜(もり)」。武蔵野台地の雑木林をイメージして在来種をベースに約60種・約700本の常緑樹と落葉樹を植え、同じ雑木林から集めた落ち葉を敷き詰め、土壌・林床環境の醸成を早める効果を見込む。あえて生育しきっていない木を植えることで、都民や地域住民らと共に育てる「ハーフメード」の森づくりを目指したという。ゲリラ豪雨発生時なども敷地内に水が浸透し外部に流れないよう、雨水が地形に沿ってせせらぎに流れるよう造成した。
「インクルーシブ広場」は、子ども向けに毛足の長い人工芝を敷き詰め、可動式の遊具を配した円形の広場。器のように園を囲むモルタル造形は、緩く高低差を付けることで小さな子の滑り台にも。全て真っ白で統一した遊具は、幼児向け遊び場づくりなどを手がける「ジャクエツ」(福井県敦賀市)の製品で、都内の公演への導入は同園が初。可動式だが重量がありビス止めなどもしてあるため、専門業者のみ運ぶことができる。今後イベントなどで一時的に遊具を移動するなど「誰もが遊べる」広場にする。
国立競技場入り口につながる階段・デッキ下に建てた「管理棟」は、毎日8時30分~17時30分にオープンする管理事務所をはじめ、男女それぞれのトイレと、オールジェンダートイレが入る。管理事務所内には授乳室も設けるほか、各トイレにもおむつ替えスペースがある。園内にはイベント時などを除きごみ箱は設けず、ごみは持ち帰りを呼びかける。
現在建設中の計5棟には、カフェやレストラン、リラクセーション施設、アウトドアアクティブティーショップなど6テナントを誘致。建物は分棟配置することで事業期間を終える約20年後に建物を撤去した後も園内に穴や空白が残らない設計にしている。テナントの詳細は今後発表する。来年1月に開業予定。