代官山駅近くの複合施設「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」(渋谷区代官山町)が10月19日に開業する。
東急不動産が手がける同施設は、「にぎわいと落ち着きがバランスよく共存する(代官山の)独自の価値観を高める」施設と位置付ける。1955(昭和30)年に開業した外国人向け高級賃貸アパート「代官山東急アパート」跡地という歴史を踏まえ、「『職・住・遊 近接の新しいライフスタイル』提案」をコンセプトに掲げる。旧朝倉家住宅などを例に「緑が街の中に根付いている」文化を後世に受け継いでいくため、「環境サステナブルな活動と施設運営を一体化させていく」という。「食に対する感度が高い街」であることから「職・住」などの要素と連携して「食」を通じた新しい付加価値の提供も図る。
約4506平方メートルの敷地に地下2階~地上10階建て、延べ床面積約2万1096平方メートルの「MAIN棟」(敷地面積約4084平方メートル)と、地上2階建て延べ床面積約198平方メートルの「TENOHA棟」(同約422平方メートル)の2棟を建てた。
八幡通りに面するMAIN棟は建築家・隈研吾さんがデザイン設計を担当。東横線で渋谷駅~代官山駅間がトンネルを抜けることや、「結界を通って街に入るゲート」のイメージで洞窟のような空間を表現。ファサードは、岡山産ヒノキの間伐材を使い異なる形状の「小さな木箱」を積み上げたようなデザインにして、間に緑を植えることで「建物全体が樹木のように」仕上げた。フロア構成は、地下1階~地上2階=商業空間、地上3階=シェアオフィス、地上4階~同10階=賃貸住宅。
サステナブルな活動拠点となるTENOHA棟(同約422平方メートル)は、地球環境をテーマに掲げる建築家ユニットSUEP.(スープ)が設計。「循環する建築」をコンセプトに、岡山産ヒノキの劣勢間伐材を構造材として使った木造で、モジュール構造や金物接合にすることで解体・移築ができ、ごみが出ないようにした。雨水は菜園やパブリックスペースなに再利用することでエネルギーの循環にも取り組む。
施設内のグリーンは、植栽計画や空間デザインなどを手がけるSOLSO(DAISHIZEN)が担当。400品種を超える植物を取り入れ、低木類は「形に特徴のある」園芸種や気候変動に「対応できると予測される」品種を、高木類は在来種を中心に、それぞれ配置する。敷地内には代官山駅から八幡通りまでをつなぐ通路(通行可能時間は6時~24時)を新たに作り、一角はイベントなどを行う広場にもなっている。
商業空間には駅と八幡通をつなぐ通り沿いに13店舗が出店。店頭にテラス席を設けたり什器を置いたりしてそれぞれが路面店のように営業できるようにする。開業時は、SOLSOによるグリーンのパーソナルサービス&ショップ「SOLSO HOME」、アパレルショップ「Ameri VINTAGE」、眼鏡・サングラスショップ「金子眼鏡店」、東急不動産とイートクリエーターが設立した日本食品総合研究所が食のイノベーションのプラットフォームとなるカフェやグロサリーなどがオープン。以降、来夏ごろまでに各テナントが順次オープンする予定。大量集客を目的とせず街に合うことや施設のコンセプトに合うこと、施設や他テナントなどとの連携にも前向きなテナントをリーシングし、各店が店づくりなどにも注力していることもあり店のオープン時期がずれたという。
地上3階は東急不動産が展開する会員制シェアオフィス「Business-Airport Daikanyama」となる。個室・半個室・セミプライベートの固定席を用意し、ラウンジとイベントスペースも設ける。同所にはSOLSOや日本食品総合研究所も入居する。
賃貸住宅のエントランスには岡山産ヒノキの間伐材のルーバーを壁面に使うことで、日差しが入り隙間から広場の緑が見られるようになっている。住居は1LDK(約60平方メートル~70平方メートル)28戸、2LDK(同110平方メートル~140平方メートル)21戸、3LDK(同160平方メートル~230平方メートル)5戸、メゾネット(同19平方メートル~310平方メートル)3戸の57戸を用意。うち3戸は隈さん、DAISHIZENの齊藤太一社長、フードエッセーストの平野紗季子さんがそれぞれプロデュースした住戸。9階・10階とテラス部分が最も広いメゾネットになる。1次募集ですでに全戸申し込みがあったという。
TENOHA棟は東急不動産社の長期ビジョンスローガン「WE ARE GREEN」を体現する拠点として「サステナブルな生活体験」の提供を図る。企画・運営はDAISHIZENグループのRGB。「CIRTY(サーディー)」というプロジェクト名でサーキュラーエコノミー活動を展開する。
カフェ「CIRTY CAFE」では、関東近郊の農家の規格外野菜や施設屋上のハーブ園、施設内の水耕栽培で育てた野菜などを使ったサラダやスープ、デザートなど「店産店消」「循環」などを意識したプラントベースフードを提供。店頭にはロスフラワーなどを販売する生花店も併設する。カフェスペースは自主企画をはじめアーティストや団体などに貸し出し小規模なイベントもできるようにする。活動の一つとして、施設の屋外広場ではマルシェや季節に合わせた企画などコミュニティーイベントも展開していく。
同施設では食品廃棄物におけるダブルサイクルループの取り組みも採用。同施設や渋谷ほか東急プラザの飲食店などから出る食品廃棄物をメタン発酵させ、発電された電機はMAIN棟に還元。メタン発酵残渣を再利用した堆肥はTENOHA棟の屋上のハーブ園や提携農家が使い、作られた農作物を使って作られたメニューをMAIN棟内のテナントや、TENOHA棟のカフェなどで提供していく予定。