渋谷区が9月12日、渋谷区役所(渋谷区宇田川町)で渋谷駅前スクランブル交差点などが例年多くの人でにぎわうハロウィーンの対策について会見を開いた。
イベントが開催されていないにもかかわらず、仮装をした人が渋谷に集まり、路上で写真撮影などをして盛り上がりを見せてきたハロウィーン。飲酒によるトラブルや器物破損、暴行、暴走車両、ごみの大量放置など、一部の来街者らによる犯罪・迷惑行為、などが社会問題にもなっている。
例年はハロウィーンが迫った10月に対策を発表していたが、長谷部健渋谷区長はこの日、「なるべく早く発信を行うことで、10月31日及び、その直前の数日に来街を予定している方がいるのであれば、(来ないように)考え直してほしい」と強調。ハロウィーン目的で来街を予定している人たちに向け早期に呼びかけるため、このタイミングで会見を開いた。
新型コロナウイルスが5類に引き下げられたこともあり、インバウンドを含め来街者数が「コロナ前、もしくはそれ以上になってきている」ことから、「昨年までとは状況が全く異なり、安全・安心の確保ができないことに強い危機感を抱いている」と危惧。当日とその直近の週末などハロウィーン期間中の渋谷駅周辺の路上にいた来街者の推計は、行動制限がなくなった昨年は、最も多かった時間帯で31日21時の約2万3000人で、同じく2021年の同23時の約1万7000人より増加。今年は、2019年の約4万人と同等かそれ以上の来街の可能性もあると見込んでいる。
さらにコロナ禍以降、路上飲酒が「常態化」。それを起因とするトラブルも考慮し、韓国・梨泰院のような雑踏事故が「いつ起きてもおかしくない」とも危惧し、今年は例年よりさらに踏み込み、「渋谷はハロウィーンイベントの会場ではありません。」というメッセージを掲げた。「ハロウィーン目的で、ハロウィーン期間に渋谷に来ないでほしい」という「強い」思いを込めたものだ。
特に路上飲酒には危機感を募らせる。例年同様、特定の期間に道玄坂やセンター街、公園通りなどのエリア、区内の道路、公園、広場、公共の場所などの駅周辺で、路上飲酒を禁止する条例を施行する。規制期間は、27日=18時~24時、28日~31日=0時~5時、18時~24時、11月1日=0時~5時。駅周辺のコンビニエンスストアを中心に、百貨店、小売店など16社(約35店)には、28日と31日(19時~翌5時)に酒類の販売を自粛するよう呼びかけていく。
区はさらに8月30日に「迷惑路上飲酒ゼロ」を目指すことを宣言し、現在パトロールの強化などを図っている。併せて一般社団法人渋谷未来デザインが「Shibuyaグッドマナープロジェクト」を発足し、第1弾としてハロウィーンの社会課題に対してアクションを起こしていく予定で、区は同プロジェクトを後援し連携していく予定。
過去の状況から、「ピークで混む」直近の土曜日とハロウィーン当日の28日・31日(各日19時~翌5時)には警備も行う。民間の警備員各日100人程度を動員し、来街者の路上滞留の抑制を図るとともに、ハチ公前広場など10カ所程度に監視台を設置する。今年はさらに、警察をはじめとする関係機関と協議して29日と30日も警備を強化する予定。
過去に用意していた仮設トイレや着替えスペースは今年も「必要最低限の範囲」にとどめ、渋谷駅前ハチ公広場と宇田川交番前の2カ所に、ごみの分別・回収場所を設置。11月1日早朝には「ハロウィーンごみゼロ対策実行委員会」が早朝にボランティア清掃の支援を行う。
10月中旬からは、渋谷センター街や公園通り、道玄坂エリアの街頭フラッグ、渋谷駅前の憲章ボード、庁内や街頭サイネージなどでメッセージを発信し、周知を図る。昨年は「仮装している人はだいぶ減ったが、それを見に来ている人がたくさんいて、7割くらいが外国人だった」ことから、英語でのメッセージなど外国人観光客に向けた発信も強化したい考え。
長谷部区長は「区長として『街に来ないでほしい』と発信することは非常につらいが、来街者の安全を第一に考えた時にはそう言わざるを得ない。ハロウィーン目的で渋谷に来街される予定を組んでいる方にはぜひ考え直していただきたい。渋谷はハロウィーンの会場ではないということをご理解いただきたい」と重ねて呼びかける。
詳細は未定だが、今年も「バーチャル渋谷」をはじめとするオンラインでのハロウィーンイベントも予定している。
ハロウィーン対策の予算は、施行額で4,794万円(駅周辺安全対策=土木部企画管理課3,860万円、ごみ対策=環境整備課200万円、フラッグ・憲章ボード=産業観光課734万円)を計上。警察をはじめとする関係機関との協議により追加される予定。