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渋谷の博物館で10年ぶり「ハチ公展」 白黒16ミリ「ハチ公物語」も上映

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 白根記念渋谷区郷土博物館・文学館(渋谷区東4、TEL 03-3486-2791)で現在、ハチの生誕100年を記念した企画展「ハチ公展」が開催されている。

白黒16ミリ映画「ハチ公物語」のワンシーン

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 渋谷のシンボル「忠犬ハチ公」として知られるハチは、1923(大正12)年11月10日、秋田県大館市で生まれる。生後2カ月の頃、東京帝国大学教授の上野英三郎博士に譲り渡され、渋谷町大向地区(現在の松濤エリア)での暮らしが始まる。1925(大正14)年、上野博士の急逝後も、出張時などに利用していた渋谷駅の改札口前で、亡き博士の帰りを待つハチの姿がしばしば目撃され、1932年(昭和7)年の新聞記事をきっかけに全国的に知られるようになった。1935(昭和10)年3月8日に11歳で病死した。

 今年で満100歳の記念すべき年を迎え、2013(平成25)年に開催された「生誕90周年記念展」以来、10年ぶりとなる同企画。長年愛され続ける理由について、企画を担当した同館学芸員の松井圭太さんは「当時はスペイン風邪や関東大震災、戦争などがあり、亡くなった家族や恋人への思いと、亡き主人を待ち続けるハチの姿がきっと重ったのだと思う。また最近ではコロナ禍でも同じ」とし、「『会いたい人に会いたい』という普遍的な心情は、時代や国籍を超えて共感を与えるのではないか」と今日まで続くハチ人気の高さを分析する。

 今回の展示では「上野博士とハチの暮らし」から「ハチ公像建設」「ハチ公の最期とはく製」「忠犬ハチ公銅像供出と再建」まで、貴重な写真や資料とともにハチの生涯を時系列で振り返る。さらにもう一人の飼い主である上野博士の内縁の妻「坂野八重子」に関する展示など、ハチ公物語に派生するあまり知られていないサイドストーリーにも光を当てるほか、100年を記念するグッズなども紹介する。

 初公開の資料では、1934(昭和9)年に銅像建設資金を集めるために開催されたイベント「ハチ公の夕(ゆうべ)」(日本青年会館)に参加する前に、渋谷駅で撮影されたハチの写真2点を掲出している。藤沢市にある「片瀬写真館」が当時撮影したもので、最近発見された。ハチの正面と横顔をしっかりと捉えた写真は珍しく、彫刻や3D制作など、今後立体的にハチの顔を再現する際の貴重な資料になるという。

 展示企画のほか、同展では1958(昭和33)年に制作された白黒映画「ハチ公物語」も無料で上映会を行っている。2017(平成29)年、都内在住者から同館に16ミリフィルムの同作品の寄贈を受けたが、制作会社など権利関係が不明で上映が控えられていた。今回の企画立ち上げを控え、広く呼びかけたところ、同作品を手がけた中川順夫(なかがわ・のりお)監督の遺族にたどり着き、許諾を得ることができたという。制作経緯は定かではないが、1948(昭和23)年に戦後復興のシンボルとして「忠犬ハチ公像(2代目)」が建立されていることから、「再建10年目の節目に制作されたものではないか」と推察される。同作品のストーリーは、渋谷駅前の忠犬ハチ公像の清掃活動をしている小学生の子どもが、先生からハチに関するエピソードを聞くというシーンから始まる。当時、教育目的に学校など中心に上映されていたようだという。

 「ハチ公の情報やエピソードは、広く知られながらも憶測や噂など、誤った情報により事実と異なるものも多い。100年を迎え、可能な限り正確で詳細なハチ公の情報を明らかにし、本当のハチ公物語を改めて伝えたい」と松井さん。

 映画「ハチ公物語」の上映時間は50分間。1回の上映につき、定員は40人。9月の上映日時は2日・9日・16日・23日の10時~、18日の10時、14時~、30日の14時~。定員を超える場合は、上映後に入れ替えを行い再度上映する。

 開館時間は11時~17時(土曜・日曜は9時~)。入館料は、一般=100円、小中学生=50円(映画鑑賞のみの場合は無料)。月曜休館(祝日の場合は翌平日)。10月9日まで。

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