渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2)などをメイン会場に8月28日、ファッションイベント「Rakuten Fashion Week TOKYO(楽天ファッション・ウィーク東京)2024 S/S」が始まり、同施設9階ホールAで「KANAKO SAKAI(カナコ サカイ)」が初のランウェーショーを開いた。主催は日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)。
ニューヨークや東京のデザイナーズブランドで経験を積んだデザイナー、サカイカナコさんが2022年春夏に立ち上げた同ブランドは今回、JFWOが日本から世界に向け新たなデザイナー支援施策として設ける「JFW ブランドサポートプログラム」のフィジカル部門「JFW NEXT BRAND AWARD」の支援ブランドとして開幕を飾った。
自身初となるランウェーショーのテーマは、「初めまして」の意味を込めた「ようこそ」。ショーでは、大きな円形にセットされた客席の中で、装飾などが一切ないシンプルな空間をモデルが闊歩(かっぽ)。「ジャケットの硬いイメージを崩すようにバランスを取った」(サカイさん)と言う白のテーラードルックで幕を開け、続くシャンパンゴールドのラメ感のあるIラインのドレスはボトムのフリンジが繊細に揺れ、さらに淡いブルーのロングドレスは、スリットから裏地の赤がのぞきアクセントに。真っ赤なトレンチコートのほか、フリンジ付きのタイトスカートに合わせたブルーのタイダイ柄のシャツ、ワイドなクラッシュデニム、耳や胸元に垂れ下がるシャラシャラとしたアクセサリーなどが目を引いた。
ショーに起用したモデルは男女が約半々。服作りの際に意識しているのは、「女性像というよりは個性豊かな人間像。周りに精神性がかっこいいと思える人がたくさんいるので、その人たちに着てもらえる戦闘服でありパジャマみたいなものを作りたいと思っている。ユニセックスではなくて、性別を分けず、自分に似合うものを選んでほしい」と語るように、モデル選びにも自身の哲学を投影させた。
特徴的な素材として挙げたのは、最後の2ルック。市松模様のコートは、京都の帯メーカーによる、貝殻を薄くシート状にして織り上げる螺鈿(らでん)織りの手法で完成させたもので、「街を歩いていて『貝』と『帯』という文字を見つけて調べたら出合った。丹後の日本海のきれいな海で取れる貝。ショーの一番のポイントになった」と話す。胸元で揺れるアクセサリーにもこだわりの石を使い、「螺鈿(らでん)織りに合うと思った。海や宇宙の感じが出るようにした」と説明した。審査員の一人で「サルバム(sulvam)」デザイナーの藤田哲平さんがサカイさんに、「疾走感があり、自身のスタイルを表現できていた。ショーを見ながら審査員満場一致で『選んで良かったね』と話していた」と声をかけると、うれしそうに笑顔を見せた。
東京発ブランドを中心に、海外から参加するブランドを含め50ブランドが2024年春夏の新作を披露する「楽天ファッション・ウィーク東京(東京コレクション)」は、渋谷ヒカリエと表参道ヒルズ(神宮前4)をメイン会場に、9月2日まで続く。