XR(ARやVRなどの総称)技術を取り入れた新しいエアレース「AIR RACE X」が10月、渋谷を舞台に開催される。
エアレースは飛行機を使い飛行技術や機体性能を競い合う空のモータースポーツで、2003年~2019年に開催されていた「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ」などが知られる。今回のエアレースは、同シリーズでアジア人初の年間総合優勝を果たした室屋義秀さん率いるパスファインダーと、建築・設計などを手がけるnoiz、XRコンテンツの制作などを手がけるpsychic VR Lab、一般社団法人渋谷未来デザインなどで構成する実行委員会が主催する。
レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ終了以降、エアレース大会の復活を目指していた室屋さん。昨年12月、noizが参画し仮想空間上に再現された仮想の「渋谷キャスト」周辺エリアを飛行するエアレースゲームが体験できるイベント「エアレース渋谷」が、仮想上の舞台にもなった渋谷キャストで開催された。そこに参加した室屋さんが、XR技術やスタッフらに出会ったことを機に「AIR RACE X」のプロジェクトが立ち上がったという。
「AIR RACE X」は参加パイロットの飛行データを基にタイムを競うレース。「渋谷デジタルラウンド」となる今回は、実際の渋谷の街に合わせて設計したコースレイアウトを用意。パイロットはそのコースレイアウトを基に、それぞれの拠点で実際に空を飛行する。その様子を、飛行軌跡や高度、G(重力)など飛行の全データを収録できる計測装置「リモート・データ・ユニット」で計測し、データを大会本部が収集・分析して勝敗を決める。これまでのエアレースは参加者が1カ所に集まる必要があったが、同じコース・飛行データを用いることでリモートで対戦できるようにした。
今大会には室屋さんをはじめ世界各国のパイロット8人(チーム)が参加。10月8日~13日に行う総当たり戦の予選ラウンドと、勝ち上がった上位4人(チーム)によるトーナメントの決勝ラウンドで構成する。予選ラウンドでは、勝ち(=1秒差以上)3点、分け(=1秒差以内)、負け0点というゲームポイントを導入し、順位を決める。決勝ラウンドは1対1のトーナメントで優勝を決める。
10月15日の決勝は渋谷でパブリックビューイングを行う。参加パイロットが予選期間中に計測した決勝用のデータを基にARの飛行映像を作ることで、実際の飛行の様子を「再現」。来場者はAR・XRのアプリ「STYLY」を通して、渋谷の街を飛行機が飛んでいるような映像を見ることができる。「観戦」スタイルは、XRデバイスやスマートフォンなどを予定する。
「レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ」の終了やコロナ禍を乗り越え、室屋さんは「イベントが無い期間を経てのエアレースなので本当に楽しみ。チームは準備万端」と話し、「リモート開催のため皆が集まることはないが、パイロットが行うフライトは全く一緒。データの精度が高いのでさらに厳しい戦いになると思うが、初開催、優勝目指して頑張りたい」と意気込む。飛行データを用いることから「パイロットはいろいろ細かい調整をして、(コックピットの)中で頑張っているのが理解してもらえると思う。それぞれの違いがはっきり見られるので面白いのでは」とも。
渋谷未来デザインの長田新子理事は、安全面などから実際に渋谷上空を飛行するレースは「絶対に開催できない」とし、「渋谷(のような都市)を舞台にする面白さがある。都市の魅力発信にもつながり、XRを活用した新たなスポーツ観戦の一つになる」と話す。
AIR RACE Xは今回を皮切りに、2024年以降は「デジタルラウンド」をさまざまな国・都市で4戦開催。2025年にはデジタルラウンドに加え、リアルの場で集まり「グランドチャンピオンシップ」の開催を目指す。