日本好きでも知られる米写真家ソール・ライターが生前所有していた日本関連の書籍を集めた企画展「森岡書店 渋谷ヒカリエ店 ソール・ライター日本関係蔵書展」が7月8日、渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2)8階で始まった。
同日から渋谷ヒカリエ9階(ホールA)で開催されているライター生誕100周年展「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」の関連企画として、銀座の書店「森岡書店」が昨年から準備を進め、ライターが持っていた日本関連書籍のほとんどをニューヨークから日本に運び込んだ。会場となるイベントスペース「COURT」には、ライターが愛した江戸時代の日本画家・俵屋宗達の作品集など80冊や、所有していた浮世絵などが並ぶ。
展示している書籍にはライター本人による書き込みなども残っており、実際には日本を訪れたことはなかったライターが、ライターのパートナーだったソームズと共に日本を訪れたかのように書き込んだウイットに富んだメモなども見ることができる。蔵書はニューヨークのソール・ライター財団が管理するもので、出展の許可を得て今年5月、日本に持ち帰ってきたという。
会場では、日本人アーティストらがライターの作品に着想を得て制作した作品なども併せて展示している。画家・平松麻さんは、ライターのニューヨーク・イーストビレッジのアトリエを訪れ、部屋に入りすぐに描き始めたという。財団メンバーの計らいでライターが持っていた紙を譲り受け、アトリエの中でライターと会話するように、部屋から見える景色などを描いていったという。「Conversation with Saul(カンバセーション ウィズ ソール)」と名付けたシリーズには、描いた順番と時間も記した。「亡くなる1週間前まで絵を描いていたというソールには、絵を描く日常があった。画家としてソールの作品を見るというのもいい」と平松さん。
ライターと生前親交があったという写真家の井津由美子さんの写真も展示。井津さんはライターが2013年に他界した3週間後からアトリエをフィルムに収め、以降も2019年まで断続的に撮影を続けた。初公開写真を含む作品の中には、井津さんが「ソールにとって神棚のような大事な所」と感じたというアトリエの一角や、ライターがソームズの誕生日プレゼントとして贈った作品なども写し出されている。
菓子作家の小川紗季さんは、ライターの作品に着想を得て和菓子を作った。ライターが愛してやまなかったコーヒーも採り入れ、「珈琲どら焼き」を完成させた。ライターも持っていた、日本の「包む」伝統について取り上げた書籍「How to Wrap Five Eggs: Traditional Japanese Packaging」の中で紹介されている「竹皮」に包み、2個セット1,080円、1日30個限定で販売する。
ライターのオリジナルビンテージプリントは点数が少ないことから、現在市場には出回っていないが、今回ニュープリントを財団公認で販売。各作品20部を用意した。
開催時間は12時~20時(最終日は18時まで)。入場無料。今月23日まで。