米写真家で「カラー写真のパイオニア」としても知られるソール・ライターの生誕100年を記念した展覧会「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」が7月8日、渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2)9階ホールAで始まる。
今年1月に閉店した旧東急百貨店本店周辺の再開発に合わせて4月10日から長期休館しているBunkamura(道玄坂2)が、同館のギャラリー「ザ・ミュージアム」から場所を変え、初めて開く企画展。ライター作品では世界初となる10面の大型スクリーンを用いたカラースライド・プロジェクションなど、ヒカリエホールならではの空間を生かした展示も見どころだ。
1923年生まれのライターは、画家を目指しニューヨークに移住後、幼い頃からカメラを手にしていた経験もあり写真の才能を友人らに買われ、1951年、「ライフ」誌にフォトエッセーが掲載。1958年には「ハーパーズ・バザー」誌でファッション写真を撮り始め、当時はまだモノクロが一般的だった写真の世界で、カラー作品で知られるようになる。1980年代に商業写真から退くが、2006年に出版された初の写真集「Early Color」(独シュタイデル)のカラー写真が脚光を浴び、展覧会が開かれたり実録映画が製作されたりした。一方、2013年に89歳で亡くなる間際まで絵を描き続け、生涯画家でもあり続けた。
Bunkamuraザ・ミュージアムでは2017(平成29)年と2020年、ライターの写真展を開催。2020年1月に開いた「永遠のソール・ライター」展は、開催中、新型コロナウイルスの感染拡大により急きょ中止となり、同年7月に「アンコール開催」するも、人出が回復しないまま終了。3度目の企画となる今回は「色」に焦点を当て、初期のスナップ写真やポートレート、ファッション写真、カラースライドなどのカテゴリーに分け紹介する。
展示序盤は、ライターが職業として写真に取り組み始めた1950~60年代ごろのモノクロによる未発表のスナップ写真作品群を展示。ライター自身が自室で焼いたプリントも公開する。当時世界の現代アートの中心地だったニューヨークで、ライターと同じピッツバーグ出身のアンディ・ウォーホルや、ジョン・ケージ、ユージン・スミスなど交流のあったアーティストたちを捉えたポートレートも並ぶ。
ハーパース・バザーなどのファッション写真は、プリントと共に雑誌そのものも並べて展示する。当時は表紙や誌面に採用された作品のポジフィルムの原本が印刷に回された後、写真家本人に戻されることがほとんどなかったため、雑誌そのものを並べることになったという。画家になるためにニューヨークに来たライターが描いた絵画作品も一堂に並べる。カラー写真の「源泉」にもなった絵画を写真と共に並べることで、ライターにとっての「色」への理解が深まる展示を意識したという。
自宅でもスライドで光を通して透過した写真を見ていたというライター。会場ではライターのアトリエをイメージした空間にスライド映写機を置き、その様子を再現。ライトテーブルの上にカラースライドのレプリカを並べたコーナーも設けた。
「最大の見どころ」となるカラースライド・プロジェクションは10面から成り、ライターの没後残された数万点に及ぶスライドの中から、未発表作品を含む約250点を巨大スクリーンに投影する。
開催時間は11時~20時。入場料は、前売り=一般1,600円、大学・高校生800円、中学・小学生500円、当日=同1,800円、同1,000円、中学・小学生700円ほか。8月23日まで。