書店を現代の「文化の箱舟」と捉え、アーティストらがセレクトした書籍や哲学などの書籍をそろえる「Shinsakabashi Books」(渋谷区代官山町)が代官山にオープンし、7月8日で2カ月を迎える。
京都でギャラリーを営むMAIN(栃木県那須塩原市)が初の書店として開いた。店名の「Shinsakabashi」は、かつて代官山エリアに流れていた三田用水猿楽口分水に架かっていた「新坂橋」にちなんで付けたという。場所は、アパレル店などが立ち並ぶキャッスルストリートから一本入った路面。黄色い看板が出迎える店の店内はグレーを基調に仕上げ、壁全面に本棚を並べ、客がゆっくりと本を読めるよう椅子やテーブルも配している。
店主が「美術品や骨董(こっとう)を身近で楽しめる人は限られているが、本は老若男女、誰もが手に取って楽しむことができる」と魅力を語る「本」を、同店のために15人が選書。「時には自らを楽しませ、絶望から自分を引き上げてくれたり、時に重大な局面の羅針盤にもなってくれたりしたように感じる」という本を通じて、「『文化』が受け継がれていけば」との思いがあるという。
店に並ぶのは、自然・食・哲学をテーマに選んだ本や、小説やアート、ビジネス書や歴史、ノンフィクションなど特定のジャンルを決めず、選者15人それぞれが「人生で影響を受けた10冊」など約600冊を選書。店主が声をかけた選者は、彫刻家の名和晃平さん、エッセイストの平松洋子さん、美術評論家でキュレーターの南條史生さん、ニッカウヰスキー創業者の孫で広告制作などを手がける竹鶴孝太郎さん、アートディレクターの八木保さん、ビームス・クリエーティブディレクターの南雲浩二郎さんら。
本棚には選者それぞれのプロフィルと本への思いなどのコメントを合わせて紹介。写真家の石川直樹さんは「読書は日常を冒険に変えてくれる。そうした指針になる10冊を選んだ」などとコメントし、棚には、画家・大竹伸朗さんの作品集「18」や写真家・探検家で詩人の星野道夫さんの撮影旅行記「アラスカ 光と風」などが並ぶ。
選者の一人、神谷敬久さんはデザイン会社「スーパープランニング」の創設者で、キャラクターMR. FRIENDLYのプロデュースなどで知られる。同店の出店場所では以前、神谷さんが立ち上げたバッグブランド「ルートート」の直営店が営業していた縁もあり、神谷さんが選んだ書籍をはじめ、現在はアーティストとしても活動する神谷さんの作品も店内に置いている。
書籍はほかに、店主のコレクションや、自然食・哲学など同店が選んだ本も取りそろえ、総取扱数は約600冊に上る。オープン後は地元の住民や、外国人観光客、服飾や建築などクリエーティブ関連の仕事をする人などが多く来店しているという。
営業時間は11時~18時。日曜定休。