洋菓子メーカー「コロンバン」(中央区)が4月17日、渋谷・公園通り近くの自社ビル(渋谷区神南2)で今年最初の採蜜を行った。
菓子作りに蜂蜜も使われるなか、それを作り出すミツバチは植物や農作物の花粉媒介者としての役割も担っている。ミツバチを増やすことで自然環境に貢献することを目的に、かつて表参道沿いで営業していた「コロンバン原宿本店サロン」屋上で2010(平成23)年に養蜂事業を始めた同社。渋谷のビルでは2011(平成23)年から養蜂事業を始め、原宿本店サロン閉店後は同所に集約している。
社内で希望者を募った際に手を挙げたメンバーで事業をスタート。原宿本店サロンの屋上の環境を整えるところ所から始まり、養蜂の知識がなかったことから、養蜂家からの指導を受けながら取り組んだ。現在は、学生時代に昆虫の生態系や養蜂を学んだ商品部養蜂担当の河辺穂奈美さん、北村優佳さんの2人が中心となって手がけている。同社は、採った「原宿はちみつ」を使い、カラメルの代わりに蜂蜜をかけるプリン、スポンジ生地に蜂蜜を染み込ませるロールケーキ、バウムクーヘンなどのスイーツも展開している。
同社では4月~7月に、たまり具合にもよるが毎年5回程度採蜜している。以降は越冬の準備で、8月に夏場のミツバチの食料となる砂糖水を与え、9月ごろまでに群数を増やすために巣箱を分ける。冬前や春前には、群数に応じて分けた巣箱を統合。3月までには与えた砂糖水から作った蜜を掃除。その後ミツバチが集めた蜜を採っている。巣箱は週に2回点検し、女王バチや産卵、病気の有無や、蜂蜜や花粉の貯蔵量を確認。夏にはすだれをかけ、冬には発泡スチロールを置くなどして巣箱内の温度を調整するなどしている。このほか、イベントへの出展や見学会などの啓発活動も行っている。
同所には現在は2層建ての巣箱9群を設置し約30万匹のミツバチを飼育している。ミツバチは5月ごろが最も増えるなか、今年の冬は寒い日が少なく温かくなるのも早かっため、冬にハチがあまり減らなかったこともありこの時期にしては多いという。収蜜エリアは代々木公園や明治神宮などで、さまざまな種類の花から集めた百花蜜となる。咲いていた時期が長かった桜や、菜の花、今年は桜が散る前から咲いていたツツジ、ニセアカシア、クサイチゴなどからも集められているという。
採蜜作業の手順は以下の通り。巣箱を開けて、布や紙を燃やした煙をかけて落ち着かせ、1層に最大9枚入っている巣板を取り出し、ミツバチを振り落とし残ったミツバチは専用のブラシで払う。糖度が高い巣房にされている蜜ぶたを切り落とした後、巣板を遠心分離機に設置し、手回ししながら蜂蜜を飛ばして一斗缶に集める。巣板には幼虫がいる巣房もあることから、幼虫が振り出されないように力加減が必要だという。巣板を戻して巣箱のふたを閉め終了となる。ミツバチが収蜜に行く前の7時30分ごろに作業を始め、採れる量などにもよるが2時間程度作業をする。この日は、約43キロだった昨年の初搾りよりも10キロ以上多い54.4キロが採れた。糖度は82度と高く粘度のある蜂蜜だった。
この日採った蜂蜜はその後工場に運び、ろ過して不純物などを取り除く。商品にも使うが、瓶詰して5月上旬に「原宿はちみつヌーヴォー」として販売する予定。これまではオンラインショップで販売していたが今月28日に直営ショップ「コロンバン原宿」(神宮前6)がオープンすることから、同店で販売も検討している。
河辺さんは「春の訪れが早かったのでハチは多くて元気に育っている。いつものヌーボー(初搾りの「原宿はちみつ」)より桜以外の蜜の割合も結構高いのでは。春の香り、花の香りを感じてもらえたら」と話す。