渋谷区の小学生が街の課題を見つけ解決策を提案する「Social Kids Action Project(ソーシャル キッズ アクション プロジェクト、以下、SKAP)」の活動が3月26日~30日に行われた。
子どもたちに自発的なアクションを起こさせ、子どもの視点・意見で大人を動かすことを目的に実施する同プロジェクト。4児の母でフリーランスとして活動する傍ら「渋谷区子ども体験コーディネーター」でもある植野真由子さんが企画・主催し、NPO法人「二枚目の名刺」(渋谷区富ヶ谷1)と連携し取り組んでいる。
トライアル(1回)を含めて7回目となる今回は、中幡・富谷・神宮前・広尾など区立小学校をはじめ、私立を含めた4年~6年10人が参加。毎年、リピーターや過去にきょうだいが参加していた児童などがいるのも特徴。コロナに伴う行動制限が解除されたなか、今年は昼を一緒に食べたりボードゲームをしたりコミュニケーションを図る取り組みが再開できたという。
今年は、昨年に引き続き神南エリアを対象にした。初日には、白根記念渋谷区郷土博物館・文学館の学芸員に街の歴史を、渋谷公園通商店街振興組合の理事長にエリアの特徴などを、東急不動産担当者には再開発についてなど、同エリアに携わる大人にそれぞれ話しを聞いた。2日目には街に繰り出し、酒類の卸売りやたばこを販売する香取屋酒店、コワーキングサロンSLOTH JINNAN、ダイニングやスクールを併設する卓球カルチャースペースT4 TOKYOなどを訪れ、「渋谷の好きな所」「困っていること」などをヒアリング。3日目には、代々木公園や北谷公園で来街者にインタビューを行った。子どもたちにはカメラも貸し出し、街なかで気になったものなどを写真に収めるように提案し、3日間で見聞きしたことを基に、それぞれが見つけた課題、その解決案を考えた。
最終日には午前中から資料を作り、午後には長谷部健渋谷区長をはじめ、商店会、協力企業、親などを招きプレゼンを行った。区のコミュニティーコインアプリ「まちのコイン(コイン名はハチポ)」がたまるゴミ箱の設置、子どもたちの遊ぶ場所が少ないことなどから天候の悪い日でも遊べる屋内の遊び場、害がないものをカラスに食べてもらったり肥料にしたりして生ごみを減らす案などが挙がった。
学校で配られたチラシで同企画を知った母親からの提案で参加した上原小学校の鈴木創輔さん(10歳)は、街なかの落書きや落ちているゴミの多さから、真っ白な壁に囲まれた落書きができる施設やゴミ箱がある場所を案内するマップを企画した。「インタビューをして、そこから自分で考えて発表までをすることが無かったので良い経験になった」と振り返った。「毎日アイデアを考えるのが大変だったが、グループで活動できたのが楽しかった」とも。
猿楽小学校の生駒季子さん(10歳)は、7年ほど前に同企画のロゴを制作した父親の後押しで参加。「最初は緊張したけど、友達がたくさんできた」と楽しんだ様子で、「大人の人も皆優しく話しやすくて、いろいろな話を聞けた」と話した。人間を手伝う存在として、ゴミ拾いをするロボットを提案したが、「(街なかだけでなく)家や学校とかにいたら掃除も楽になると思う」と期待を込めた。
長谷部健渋谷区長は生駒さんの案に「ガムをはがしてくれるロボットがあればと、話を聞きながら僕自身も発想した」と話し、「アプリを使う案などが出てきて、最初の頃に比べて発想の変化を感じる」と総評した。
同プロジェクトでは、アイデアは引き続き子どもたちが主導となり実現に向けて行動していくことを勧めている。SKAPのホームページでは過去に子どもたちが発表した提案を全て掲載し、協力してくれる「大人」を個人・法人問わず募っている。昨年ゴミ拾いやサステナブルな取り組みを提案した児童は、代官山の再開発エリアを見学したり自身の小学校でワークショップを開催したり活動を進めた。新たな取り組みとして昨秋には、地元企業協力の下、「渋谷区くみんの広場 ふるさと渋谷フェスティバル」にSKAPのブースを出展した。
「参加者やインタビューに行った場所など、ご縁を感じた」と振り返った植野さん。大学生2人が手伝いで参加したが「若くてパワーがあるし、積極的に子どもたちに混じって楽しませてくれた」と続けた。