建築家・藤本壮介さんがデザインした新しい公衆トイレ(渋谷区代々木3)が3月24日、渋谷区西参道に完成した。
日本財団(港区)が展開する、建築家ら16人が参画し区内の公衆トイレ17カ所をリデザインする「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの一環。「暗い」「汚い」「臭い」「怖い」「危険」などのイメージから入りづらい状況にある公衆トイレを、デザイン・クリエーティブの力を活用し「誰もが快適に使える」ようにすることを目指し2020年8月から取り組んでいきたが、同所で全17カ所が完成した。
設計するに当たり人の往来を調べ、緑道に隣接することから地元の人、ホテルが近くにあることから外国人旅行客、タクシーの運転手など、多様な人がいることが分かったという。藤本さんはこれまでにも公衆トイレを手がけた経験はあるが、人通りが多い場所は初めてで、「街の中にどういう場所があると良いのか」を考えたほか、発信力のある渋谷区内であることから「日本が考える社会や地球環境とのつながり、公共性のあり方、インクルーシブな考え方を盛り込められたら」と設計した。
コンセプトは「器・泉」。公衆トイレを「都市の中の水場、街の泉」と考えると同時に、水は「地球環境の象徴のようなところがある」と、「公共の水場」としての手洗い空間の提案を図る。
面積は39.53平方メートルで、トイレブースと手洗い場で構成。鉄筋コンクリートとモルタルのトイレブースは、「手洗い場がトイレになったように」あえて高さ3メートル前後と低めに作った。オストメイト用設備やベビーベッドなども備えるバリアフリートイレ(4.81平方メートル)、女性用トイレ(2室、5.64平方メートル)、男性用トイレ(大便器台、小便器3台、7.91平方メートル)。各個室内に手洗い場も用意している。
トイレブースとアプローチを挟んで設置した手洗い場は、鉄骨でフレームを組んだ上にメッシュ状の鉄筋を加え、モルタルで器のように中央が凹んだ形に成形。異なる高さの位置に蛇口6口を設置し、子どもや大人、一部壁をくぼませることで車いすに乗る人なども利用しやすいようにした。植物も水を使うという意味を込めてハイノキを1本植えている。
藤本さんは「毎日通るような地元の方は、普段からこの場所があることが安心感につながり、手を洗ったりちょっと水をくんだり日常の一場面になってほしい。初めて通る方には驚きとともに使ってみたいと思ってもらい、限りある水を皆で共有しながら、地元の人と外国人旅行客の方などが出合うきっかけ、コミュニティーが生まれるきっかけになれば」と期待を込める。