渋谷区を拠点とするサッカークラブ「SHIBUYA CITY FC(渋谷シティFC)」が今季の新体制を発表した。
渋谷区からJリーグ参入を目指す同クラブは、2014(平成26)年に発足した「TOKYO CITY F.C.」が前身。Jリーグ1部(J1)から数えて7部に当たる東京都社会人サッカーリーグ1部(都1部)に所属している。
昨季は元日本代表の戸田和幸さんをテクニカルダイレクター兼コーチとして招へいし、リーグを勝ち抜き昇格をかけたトーナメント戦に出場するも2回戦で敗退した。今季はリーグ戦1位通過、関東2部リーグへの昇格を目標に掲げる。
クラブを運営するPLAYNEWの小泉翔社長は「得たものはすごく多かった。どういうサッカーをしていきたいのかを考える一年、僕ららしいサッカーを言語化・体現できた」と振り返る。具体的には、Jリーグの試合にはコアファンが多く来場するのに対し、渋谷を拠点にするということは、コアファン以外が半分以上を占めると考え、「ゴール前の攻防を増やし点がいっぱい入るような、サッカーを知らない人が90分間飽きずに見られる、初めて見る人も熱狂できる」サッカーを目指す。増嶋竜也監督も「点を取られてもそれ以上点を取る攻撃的なサッカーで結果を出していければ。攻撃の練習ばかりしている」と笑い、「このカテゴリーは勢いも大事なので、若いパワーを生かしながら最大限やっていきたい」と続けた。
増嶋監督は今季監督に新任。「経歴よりも一緒にチームをつくるハングリーさがある若い監督とやりたい」(小泉社長)とオファー。「サッカーが好きで監督をやりたいという気持ちを強く持っていた」ことなどから快諾したという。17年間のプロ生活でJリーグや天皇杯などで優勝を経験している増嶋監督は、1月から指揮を執っているが「(Jリーグと)プレーのレベルや環境の違いはあるが、サッカーに対する姿勢や上を目指す気持ちは変わらない」と考える。「若い選手と経験のある選手を一緒にプレーさせることで成長できるようにとり組んでいる」とも。
今季は新たに13人を迎えた計28選手で戦う。カテゴリーの特性などから「走れること」を最優先に若手を中心に獲得し、平均年齢は24.9歳と最も若くなった。今月卒業を控える比留間輝選手は青山学院大学から加入した。「4年間通っていた街のチームで戦うとは思っていなかったがうれしい」と入団を喜び、「アシストやゴール、ボールを持ったら何か起きるんじゃないかとワクワクするプレーをしたい」と意気込む。土田直輝選手は「クラブのビジョンや目標にワクワクし、このチームでJリーガーになりたい」と、4部に当たる日本フットボールリーグのヴェルスパ大分から移籍を決めた。「最初は(レベルの)違いを感じたが、経験を生かしてサッカーの部分でリーダシップ取っていきたい」と話した。「目立つプレーヤーではないが、いろいろな所にいると思うのでそこを見てもらえたら」とも。キャプテンの宮崎泰右選手は今季のチーム「特に新加入選手は一人一人が考えながらプレーできる選手がそろった。練習試合を重ねて、スタメンとそれ以外の選手との力の差が縮まってきているので、自信を持っている」と力を込めた。
今年40歳を迎える阿部翔平選手は「年齢では引っ張っている」と笑いを誘いつつ、「僕が頑張ることで40歳が頑張っているから、俺たちが頑張らない訳にはいけないという気持ちも生み出せたら」と話す。渋谷シティFC5年目となるが、「入団当初と変わらずコンディションはキープできている。Jリーグ時代は量を食べた方が良かったが、調整することで体のキレが出るなどかなり良い感じというか、抱えていた問題がクリアになってきている」と言い、「プレーでは足を引っ張らずに引き上げられるように、全ての試合でうまくいく訳ではないので、そういう時にどういう戦いができるかがすごく重要。円滑に解決できるような働きかけもしていきたい」と続けた。
ユニホームは、メジャーリーグの公式キャップで知られる「NEW ERA」がサプライ。シャツはストライプ模様の中に、忠犬ハチ公像など渋谷の写真をプリントしている。クラブカラーであるモノクロと、渋谷区の花・ハナショウブから着想を得た紫を着用する(いずれもゴールキーパー以外)。
今季は有観客で試合が行われるが、阿部選手は「応援してくれる人がすぐ近くにいると頑張らないといけないと、純粋に良いプレーをしたいと思う。試合中体力的につらい時もあるが、頑張れと言ってもらえるだけで、最後の一歩が出る。間近で見てもらい、チームの成長も見守ってもらえれば」と来場を呼びかける。
都1部は今季19チームが在籍。3月~9月ごろにかけて総当たり戦を行い、上位3チームが11月開催予定の関東社会人サッカー大会に出場。決勝に進出した2チームが関東サッカーリーグ2部に昇格する。
今季の開幕戦は3月12日(16時~)、駒沢公園補助競技場で元日本代表の本田圭佑さんがゼネラルマネジャーを務めるEDO ALL UNITEDと対戦する。