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東急百貨店本店、最終営業日迎える 惜しむ客続々、食品棚は空に

セール品を求める客でにぎわう5階雑貨売り場

セール品を求める客でにぎわう5階雑貨売り場

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 再開発に伴う営業終了により55年の歴史に幕を閉じる東急百貨店本店(渋谷区道玄坂2、以下「東急本店」)が1月31日で最終営業日を迎え、店の様子を写真に収める人や閉店を惜しむ客らが続々と訪れている。

店の外観を写真に収める人たちの姿も

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 東急本店は、渋谷駅北東に位置する旧渋谷区大向小学校跡地に1967(昭和42)年11月1日に開業。1934(昭和9)年にオープンした東急百貨店東横店(2020年3月営業終了)に代わる本店となり、1989(平成元)年には隣接する駐車場スペースにBunkamuraが開業した。再開発は、東急グループがLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループの不動産開発投資会社と組んで手がけるもので、1万3000平方メートル(Bunkamuraを含む)を超える敷地に地上36階・地下4階の複合施設を新設。高級外資系ホテルやレジデンス、商業区画などが入る計画。

 同店では昨年5月以降、「THANKS&LINK~ありがとうの気持ちがつむぐ、美しい未来へ~」と銘打ち、催事やセールなどのイベントなどを提案してきた。最終営業日を迎えたこの日も、2階・紳士アパレル、3階・婦人コート、6階・洋品雑貨など、各フロアで最終セールを展開。1階正面エントランス近くには年表などのパネルも展示し、「東急本店」などのロゴが躍る大型サインが間近に見られる屋上や、7階の総合書店「MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店」に足を運ぶ来店客も多く見られている。

 店舗入り口は多くの客であふれ、惜しむように店からのメッセージがつづられたポスターや外観を写真に収める人の姿が目立つ。2年前に亡くなった母親の遺影と共に写真を撮っていた男性は「バリアフリーが行き届いた百貨店で、足が不自由だった母はここしか来ることができなかった」と振り返った。店を前に、涙で一礼する女性の姿も。

 ラストセールとして食器やタオル、スリッパなど生活雑貨などがずらりと並んだ5階・雑貨売り場は、セール品を買い求める客でにぎわいを見せている。都内在住の70代の女性は「服飾品など何か良いものが欲しい時に来ていた。Bunkamuraに来るついでなどにも利用していた」と言い、「いつ来ても落ち着いて商品を見ることができた」と思い出を振り返る。

 渋谷区在住の田川陸郎(ろくろう)さん(87)は、同店に30年以上通う常連客。食材や家庭用品も同店で調達していたと言い、「最後だから見ておこうと思って来た。家から近くて便利だったので今後どうしたらいいか。駅前の方まで買い物に行くつもり」と不安ものぞかせた。

 1990 (平成2)年に本格的なワインセラーを導入し、デーリーワインからプレミアムワインまで常時約2000種類をラインアップしてきた地下1階ワイン売り場にも多くの来店客の姿が。食品売り場は、夕方前の時点で商品がほぼ売り切れており、空の棚やショーケースが目立った。

 ワイン売り場は、継続を希望する声が寄せられていることなどから、同店近くの渋谷・松濤エリア(渋谷区松濤1)に3月10日に移転オープンすることが決まっている。

 1987(昭和62)年に日本橋店に入社し、日本橋店の閉店(1999年)の際にはスタッフとして携わったという稲葉満宏・東急百貨店本店長は、東急本店の特性について「40%が外商での売り上げで、外商比率がとても高いお店」と明かし、「日本橋店閉店の際はセールが前面にあった。本店の閉店に際しては、外商や松濤に住む富裕層の客層が多いため、ただの閉店セールではない閉め方をしようと思った」と閉店に向けた最終企画のテーマ「THANKS&LINK」について説明。

 「『LINK』は皆さまとの絆を大切にし、つながり続けたいという思い」だといい、同店外壁に最後に掲げられた懸垂幕の写真には同店スタッフと共に神南小学校の児童たちが写っていることに触れ、「次の世代の子供たちに、渋谷の美しい未来をつなげていきたい」と続けた。

 本店長は2020年4月から務めており、「当時はコロナ禍だったので葛藤がある中で営業していた。最近通常通り営業できるようになり、閉店に際して多くのお客さまに来店していただき、『ありがとう』『さみしい』という言葉をいただき、寂しさを感じた」と振り返った。

 店ではこの後、感謝の気持ちを込めて来店客に花を進呈するフラワーライングリーティングを行い、19時に営業終了を迎える。

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