渋谷区立笹塚小学校(渋谷区笹塚2)で「教育版Minecraft(マインクラフト)」を活用した先進的なプログラミング学習が行われている。1月20日、6年生の授業が公開された。
2020年度から全国の小学校での「プログラミング教育の必須化」に伴い、渋谷区では2017(平成29)年9月から全国に先駆けて区立小中学校の児童・生徒全員に1人1台のタブレット型端末を配布。2019年からは、東急とサイバーエージェント、DeNA、GMOインターネットグループ、MIXIのIT大手4社で「プログラム教育事業に関する協定」を締結し、小中学校でのプログラミング教育の充実を目指し「キッズバレー」と称したプロジェクトを始動。IT企業ならではのリソースを活用し、プログラミング教育を支援する講師・サポートスタッフの派遣や授業カリキュラムの提供などを進めている。
3年目を迎えた2022年度の同プロジェクトでは、区立全小中学校(26校)の授業支援に加え、新たに笹塚小学校など一部の小学校で、教育版マインクラフトなどを活用した「プロジェクト型学習」の支援も始めた。荒木憲秀校長は「子どもが課題を見つけて解決していく、探求学習をもっとやっていきたい気持ちはあるが、なかなかできていないのが現状。マイクラは最適な教材の一つ。きちんと学びにつながる一歩を踏み出したかった」と話す。
同校6年生は昨年10月からGMOインターネットグループの支援を受け、教育版マインクラフトを活用して「15年後の笹塚の街の中心となる新しい学校」をテーマに、子どもたちが理想とする学校を表現する学習に取り組む。全2クラス合同で4~5人ずつの班を14班つくり、班ごとに実現したい「未来の小学校」のコンセプトやアイデアなどを創出し、最終的にマインクラフトでプレションテーションを行う流れ。これまで総合的な学習の時間を通して約30時間を費やし、20~80代までの地域の人々に事前アンケート調査(約160人から回答)を実施したり、児童のアイデアに対し、保護者が改善点などをフィードバックする「未来会議」を開いたり、地域に―ズや大人の声を参考にしながら各班がコンセプトを練り上げてきた。
「子どもたちだけではなく、地域の人も気軽に使える学校」をコンセプトとする2班は現在、地域の人々が自由に使える体育館・プール・屋上、さらに壁など取り除いた開放的な教室などを制作している。「黒板ではなくホワイトボードや大きなテレビも置きたい」と発表する児童に対し、講師を務めるGMOインターネットグループの成瀬允宣さんは「教室の壁全体をホワイトボードにするとか。またはホワイトボードじゃなくて、プロジェクションマッピングという新しいデジタル技術もあるので、もっと調べてみたら」と、従来の教室にない「新しさ」を求めた。
「地域の人々と共に学び、環境に優しい学校」をコンセプトとする5班は、学校内でエネルギーの一部を自給するため、風力発電や太陽光パネルを屋上に設置するほか、給食の廃棄や生ごみ問題の解決に向けたコンポスト設置や家畜の餌としての再利用など、SDGsを重視した学校づくりを目指す。「食品廃棄や生ごみ問題の解決という課題は分かっているが、それをマイクラでどう表現するべきか…」とビジュアル表現に悩む姿も。それに対し、中嶋尊弘教諭は「マイクラの表現に迷ったら、先生や講師をどんどんつかまえて」と呼びかける。
子どもたちのアイデアの中には「私のおばあちゃんは手が不自由で蛇口が回せないため、レバー式の水道を作りたい」「安心して購入できるアレルギー自動販売機を置きたい」「誰でも使えるジェンダーレスのトイレが欲しい」「(公園が少ないので)学校屋上にブランコなどの遊具やベンチを置いたり、花畑を作ったりして、地域の憩いの場にしたい」など、子どもたちを取り巻く身近な課題や、日々の学校生活の中で実感する不便さを改善するアイデアが数多く挙げられた。
同授業は2月中旬まで続き、最終発表会を行う予定。