アイドルグループSMAPの元メンバーで、アーティストとしても活動している香取慎吾さんの個展「WHO AM I－SHINGO KATORI ART JAPAN TOUR－」が12月7日、渋谷ヒカリエ（渋谷区渋谷2）9階のホールAで始まる。

これまで見せてこなかった部分も表現する「闇」エリア

　子どもの頃から絵を描くことが「大好き」で、「人に見てもらいたいたい」と描いてきたなか、多くの人に見てもらえる機会となる個展の開催を夢見ていたという香取さん。念願かない、2018（平成30）年にフランス・パリで初個展を、翌2019年には豊洲で日本初の個展「BOUM! BOUM! BOUM! 香取慎吾 NIPPON 初個展」を、それぞれ開いた。

　3年ぶり3度目の個展となる今回。「自分は一体誰何だろう」という意味を込めて、同展のテーマともなる「Who AM I」と銘打った。場内は大きく「光」のエリアと「闇」のエリアで構成する。

　香取さんは、歌ったり演技をしたりさまざまな活動をする自身を「香取慎吾の好きなところ」としつつ、辛い時や苦しい時には「自分って何なんだろう」と下を向いてしまうこともあるという。作詞・作曲家や脚本家・監督などさまざまな人が携わる歌や芝居と異なり、真っ白のキャンパスに「自分一人で絵の具を使って描く」アートを展示する個展においては、「今持っているもの、見てもらいたいものは全部出しなよと自分の中の自分に言われた」ことから、これまでは見せてこなかった「闇の部分」も見せることに。双方を合わせて「より僕の深い所まで知ってもらいたい」と思いを込めた。「気分があまりよくない時ほど自分では気に入った絵を描ける。良いのか悪いのか発散の場でもある」とも。

　会場では前回の個展でも展示したこともある作品と、初公開となる作品各100点の計200点を展示。数は多いが「まだまだ描いたものがある」とセレクトは悩んだという。黒を基調とした「闇」エリアでは、顔に包帯を巻いた裸の男性が複数の人に見られているような作品や、青空のなか黒い煙が立ち上る建物のようなものや、そこから伸びる暖色で表現された一筋の線などを描いた「2022」（2022）、大きく開かれた口を描いた「gossip」（2015）、紙に鉛筆でさまざまな絵を描いた計327枚の「空想ファンテジー」、つなごうとしているかのように伸ばされた2本の腕を描いた「Distance」（2020）などを並べる。

　白い空間の「光」のエリアでは、自身の顔写真の上にペインティングした「Who AM I」（2022）、香取さんがSNSで塗り絵を募集した「#NURIEdeWHOAMI」（2022）、ピンク色で抽象的に桜を描いている「SAKURA」（2021）、雪の結晶を描いた「Snow Crystal」（2020）、複数の数字を描いた「マイナンバー」（2022）、作品集「しんごのいたずら」原画などが並ぶ。鉄パイプを組み合わせた木のような什器への展示や、床にもプリントした作品を貼るなどしている。香取さんが手がけた、今年開業10周年を迎えた渋谷ヒカリエの記念ロゴマークの原画も並べる。

　作品はキャンバスへのペイント作品が中心だが、「余った絵の具で描く自由なものが一番好き」と、キャンパスに描く際に絵の具が垂れても大丈夫なように敷く段ボールに描いた作品や、ブロンズの彫刻、香取さんが生み出したキャラクター「黒うさぎ」のスタチューなども並べる。

　場内で流すBGMは音楽家・渋谷慶一郎さんが担当。場内にはスピーカー24台を設置し、流れる音をプログラミングで制御。それぞれの音が共鳴することで「その瞬間にしかない」音楽になるという。一部では光やスモークの演出も取り入れている。香取さんは、美術館などで開催されているような典型的な個展を考えていたが、「ライブをつくっているような（感じになり）、やっぱりこういうことになるんだというのは自分でも面白い」と触れた。

　前回の個展とは異なり、キャプションに作品詳細を記載していないほか場内の撮影も制限している。「ちょっと優しくない感じもあるが、スマホで何でも（写真を）撮れたり情報を交換できたりするのもすてきだが、ちょっとした不便さがあることでより深い所まで感じてもらえるのでは。それぞれの思いで見てほしい」と考える。

　開催時間は12時～19時（金曜は20時まで、土曜と今月28日～2023年1月3日は11時～20時、日曜・祝日は11時～18時）。入場料は、一般＝平日2,300 円、土曜・日曜・祝日2,500 円、中高生＝同1,300 円、同1,500円、小学6年生まで無料。2023年1月22日まで。1月1日は休館。