リアルとバーチャルの空間が連動する「デジタルツイン渋谷」の実証実験が10月27日、始まった。
リアルの人間が持つ端末には「デジタルツイン渋谷」利用者がアバターで写る
デジタルツインは、写真の画像データなどリアルのデータを活用しバーチャル空間上に場所や物などを再現するもの。「デジタルツイン渋谷」は、KDDIが同社も参画する「渋谷5Gエンターテインメントプロジェクト」と共に取り組む。
建て替え中の渋谷パルコの工事仮囲いで展開していた漫画「AKIRA」のコラージュ作品をAR(仮想現実)で再現するなど、2019年から5G通信やAR・MR(複合現実)を活用して渋谷を舞台に「テクノロジーを活用した都市体験の拡張」に取り組んで来た両者。
しかし、新型コロナウイルス感染症流行に伴いリアルの街での取り組みが困難になったことから、2020年に「バーチャル渋谷」を立ち上げ、音楽ライブやアニメのキャラクターなどのトークショーなどのイベントを開催してきた。今後の人流回復を見越し、リアルとバーチャル空間が連動する「デジタルツイン渋谷」の実用化を進める。
「デジタルツイン渋谷」は、米スターフィー社が有する、衛星写真から3Dマップを生成するため、画像から位置を測定する「VPS (Visual Positioning Service)」の技術をベースに開発。リアルとバーチャル上の位置情報を同期させることで、リアルとバーチャルにいる双方の人が同じ場所・物を共有することができる。加えて会話や写真共有などで双方向コミュニケーションも取れるなどの特徴がある。リアルにいる人間の端末(スマートフォンやタブレット)には、「デジタルツイン渋谷」利用者のアバターが写る。
第1弾となる実証実験(一般非公開)は、渋谷センター街・バスケットボールストリートにあるアルコール0.0%~3%のドリンクを中心に提供する飲食店「SUMADORI-BAR SHIBUYA」と連携。「デジタルツイン渋谷」に同店を「再現」し、遠隔地から入店した利用者は、リアル店舗にいる客と会話できるようにした。
同時にアパレル店舗での接客を想定した実験も実施。「デジタルツイン渋谷」上にはリアルな空間と同じ商品を並べ、自宅などから利用する客は、店員と会話をしながら、気になる商品があった際は店員がマネキンに着せてそ場で写真を撮って共有することで実際の商品をイメージしやすくしている。
手を振ったり指を指したりといったアクションはできるが、「デジタルツイン渋谷」上での決済や、ビデオチャットも取り入れたコミュニケーションなどは、これから導入に向けて取り組んでいく。
当初は「バーチャル渋谷」内での実装を目指したが、現実にないものをつくるなど拡張していくこともあるため、同期を取ろうとするとリアルと連携できないことから、別の空間でつくった。バーチャル渋谷ではイベントなどエンターテインメントの企画、「デジタルツイン渋谷」では接客や観光など、ユースケースによって使い分けていく考え。
KDDIはデジタルツインを活用し、アパレル店舗や飲食店、神社仏閣などの観光地、不動産、家電量販店などさまざまな業種の実店舗と実証を進め、2023年夏ごろにサービス提供を目指す。