2023年春夏シーズンの新作を発表するファッションイベント「Rakuten Fashion Week TOKYO」が8月29日に開幕し、渋谷ヒカリエ（渋谷区渋谷2）9階ホールAでレディースブランド「FETICO（フェティコ）」の新作がランウェーを飾った。主催は日本ファッション・ウィーク推進機構（JFWO）。

オープニングを飾った「フェティコ」

　日本のファッションビジネスの国際競争力強化を図る目的で2005（平成17）年に始まった「東京発 日本ファッション・ウィーク」が前身となる同イベント。東京コレクション（東コレ）とも呼ばれ、年2回、渋谷ヒカリエと表参道ヒルズをメイン会場に、参加ブランドがショーなどで新作を披露。冠スポンサーは、2011（平成23）年からメルセデス・ベンツ、2017（平成29）年からAmazonがそれぞれ務め、2019年にはAmazonに代わり楽天が冠スポンサー契約を結んだ。

　2023年春夏シーズンは49ブランドが参加。コロナ禍で各業界でデジタル施策が進化するなか、イベントの核となるショーは、引き続きフィジカル、デジタル双方で発表。初参加も15ブランドに上り、メイン会場となる渋谷ヒカリエと表参道ヒルズ（神宮前4）を中心に、新ブランドを支援する取り組みやSDGsの発信、オリジナルソング制作など、「東京らしい」ファッションウィークを目指す。

　初日に、フィジカルのランウェーショーの先陣を切ったのは、「クリスチャンダダ」でウィメンズデザインを手がけたデザイナー舟山瑛美さんが2020年に立ち上げた「フェティコ」。JFWOが新たなブランド支援プログラムとして、世界を視野に新人デザイナーの輩出を目指す「JFW NEXT BRAND AWARD」のフィジカル部門で、初回の大賞に輝いた。

　女性の造形美を強調し、相反する要素を重ねながら、国内繊維産地や職人との取り組みなど「時を経てもビンテージとして愛されるような」丁寧なものづくりやデザインを心がけてきたというデザイナー、舟山さん。最新コレクションでは1970年代に作家や女優として活動した故・鈴木いづみから着想。曲線美や自己愛、繊細さなど舟山さんが感じた魅力をはじめ、鈴木が生きた1970年代のエッセンスも取り入れた。

　透け感のある素材や構築的なデザインが目を引くボディーコンシャスなミニ丈のルックで幕を開けたショーは、大胆に背中の開いたワンピース、バギーパンツなど全身黒のスタイルが続き、レースのポイントや襟元などに白を採り入れ、オールホワイトのルックに変化。その後、カラーは赤みやくすみなどの茶系を挟み、ハードなパテントレザーのパンツルック、体に沿い縦長のラインで見せるメッシュ素材などで再び黒に。

　フレアシルエットのスカートやジーンズや、ネオンカラーのボディスーツなどは70年代の要素を採り入れたほか、深いVネックのノーカラージャケットのセットアップは、深いカッティングを好んで着た鈴木のスタイルにヒントを得たという。ブランド初となるシューズも登場し、ソールはプラットフォームとフラット、素材はパテントやリザード型押しなどのデザインがお目見えした。

　ショー終了後の授賞式には舟山さんをはじめ、審査員を務めた「TOMO KOIZUMI」デザイナーの小泉智貴さん、「SULVAM」デザイナー藤田哲平さんらが出席。舟山さんは「デザイナーを志した10代前半からファッションショーをやりたいという夢はずっとあった。ようやくその夢をかなえられて感無量。すごい勢いでファンや支えてくれる方が増えているので感謝している。こういうかたちで一つ恩返しができて良かった」と感謝の言葉を口にした。

　ブランドの客層については、「業界のプロにも響くものを作ろうと狙っていた。スタイリスト、バイヤー、エディターなどが買ってくれて、そこを見ているファッション感度の高い方も付いてきてくれているという認識。年齢層もバラバラ。頑張って買ってくれる学生もいるが、共通して言えるのは自分を美しく見せたい、美意識が高くファッションが好きな方。この輪を広げて、国内だけでなく『こういう服を着てみたい』と思う方に届けられるようにしていけたら」と話した。

　ファッションウィーク期間中は、各ブランドのショーをはじめ、フィッシングブランド「DAIWA」が学生と連携し、漁網をアップサイクルしたファッションアイテムを展示する「BEEARTH-FRIENDLY」や、20周年を迎えるファッション誌「FUDGE」のビジュアルを振り返る展示、渋谷ヒカリエ周辺のエリアや渋谷川付近のゴミを収集し手を加え、衣服を制作した作品展「RIVERSIDE STORY 渋谷川編」などの一般向けイベントも開催。9月3日に閉幕する。