渋谷・明治通り沿いにある創業43年のバーボン専門店「ボイルストン」(渋谷区渋谷1、TEL 03-3407-2417)が8月10日で渋谷での営業を終了し、下北沢へ移転する。
1979(昭和54)年、当時1階にあった「カミムラ文具店」のビル3階にオープンした同店。初代店主の熊手篤男さんがシアトル大学留学中にサークル仲間とよく通ったパブが「Boylston Ave(ボイルストン・アベニュー)」にあり、そこでバーボンウイスキーと出合い魅了されたのが始まり。店名もその通りに由来している。
オールドアメリカのアンティーク家具や雑貨など東海岸の書斎をイメージした店内は60~70年代のロック&ポップスが流れ、当時日本でなじみのなかったバーボンウイスキーが飲める「最先端のおしゃれなバー」として、オープンから1年足らずで若者の間で一躍人気店となる。「ポパイ、ぴあなどの人気雑誌がこぞって店を取り上げ、3階から1階まで行列ができるほど」と話すのは、2代目店主の山田満寿美さん。翌年には高田馬場店に2号店、続いて自由が丘店、青山店、新宿店、東急ハンズ(池袋店・町田店)、吉祥寺店、WEST渋谷、下北沢、名古屋店など一気に店舗を拡大。「日本一バーボンウイスキーを販売する店として、初代店主が米ケンタッキー州の名誉市民の資格を授与されるほど、その勢いは本当にすごかった」と当時を振り返る。
その後、バーボンウイスキーブームの衰退やバブル崩壊などの影響を受け、店の閉店が相次ぎ、現在は創業店である渋谷店が残るのみ。山田さんは1987(昭和62)年、吉祥寺店でホールスタッフとして働き始め、1989年から渋谷店の店長となり、2006(平成18)年から同店を引き継ぎ、2代目店主として現在に至る。
バーボンウイスキーの取り扱い銘柄は、山田さんが個人的に昔からコレクションしていたオールドバーボンを含めて約100種程度。人気のフードメニューは、辛みの利いた豆の煮込み「チリコンカヌー」(600円)、「ベイクドナチョス」(760円)、「ボイルストンジャンバラヤ」(880円)など、テキサスメキシコ料理のテクスメックス料理やアメリカ南部のケイジャン料理など「個性の強いバーボンに負けない」メニューを提供する。
渋谷店の営業終了の理由は、築60年以上となるビルの老朽化に伴うもの。山田さんは「昨年夏頃から渋谷で物件を探していたが、コロナ後の需要を見据えて家賃が高騰し、渋谷での移転は諦めざる得なかった」と残念がる。一方、下北沢で5月、一目ぼれする物件との出合いがあったという。「坪数は15坪と現在の17坪より少し狭くなるが、ザ・スズナリ向かいの2階の物件。家具や飾りを全て移し、渋谷とほぼ同じような店が再現できると思う」と期待を込める。
「渋谷に来て30年、まさかこんなに長くいるとは思わなかったが、お客さまも同じように年を重ねてきた。独身だった人が結婚したり離婚したり、病気になった、リストラされたり…いろいろな人生があったが、それを私も一緒に歩んできた感じ。距離を保ちつつも、みんな友達みたいな感覚で本当に感謝しかない」という。さらに「下北沢は常連客だけの閉鎖的な店にはしたくない。誰でも気軽に入れて、『下北ならボイルストンだね』と言われるような店にしたい。新たな伝説が作れれば」(山田さん)と新天地に向けて意気込みを見せる。
営業時間は15時~24時。下北沢の新店舗(北沢タウンホール隣)オープンは9月末頃を予定。