LINE CUBE SHIBUYA(渋谷区宇田川町)で6月7日、日本発アジア最大級の短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア(以下SSFF & ASIA)2022」のオープニングセレモニーが行われた。
「Shibuya Diversity AWARD」を受賞した「音の無い部屋」より
俳優の別所哲也さんが創設者となり1999(平成11)年に原宿で始まった「ショートショート フィルムフェスティバル」。2004(平成16)年には米国アカデミー賞から公式認定を受け、アジア作品を集めた「ショートショート フィルムフェスティバル アジア」を兄弟映画祭として初開催した。以降、SSFF & ASIAとして両祭を同時開催している。
今年のテーマは「Meta Cinema~超える・見つける・始まる」。おととし・昨年とコロナ禍でオンライン施策が発展してきたなか、「より立体的な」かたちで映画・映像の未来を体感できる場や新しいエンターテインメントを見つける場をつくることで、作り手と見る側とが一緒に映像文化を作っていける映画祭を目指す。今年は、世界126の国と地域から集まった5720作品の中から選ばれた200作品以上を上映・配信する。
次年度の米アカデミー賞短編実写部門への推薦につながる「オフィシャルコンペィション」は、これまでの3部門に「ノンフィクション部門」「アニメーション部門」が加わった5部門に拡大。国内の作品による「ジャパン部門」には、黒木瞳さんが監督する「線香花火」、青柳翔さんが監督する「いくえにも。」、玉城ティナさんが監督する「物語」、千葉雄大さんが監督する「あんた」、永山瑛太さんが監督する「ありがとう」、前田敦子さんが監督する「理解される体力」といった、俳優陣が監督した作品もノミネートした。
ほかにも、スマートフォンで撮影された作品による「スマートフォン映画作品部門」や、東京の「魅力」を発信する作品群「Cinematic Tokyoプログラム」、国内の25歳以下の監督が製作する5分以下の作品を集めた「U-25プロジェクト」、キッズプログラム、VR空間プラットホーム「DOOR」で配信するプログラムなどを展開する。
渋谷区とタイアップする「Shibuya Diversityプログラム」は、「ちがいを ちからに 変える街。」という区の基本構想を普及・啓発をする取り組みの一環として2017(平成29)年から展開。人種やジェンダー、老後などダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(包括・包含)をイメージした作品をラインアップしている。
この日、アワード受賞作品が発表された同プログラム。選ばれたのは、耳が聞こえない母親と健常者の娘の日常の風景を描いた名嘉真崇介監督の「音の無い部屋」。監督にはトロフィーと副賞としてファッションブランド「ヴァンキッシュ」の「渋谷スカジャン」が進呈される。名嘉真監督は「今の社会においてとても意義のある価値のある賞を頂けたこと、作品を評価いただきとてもうれしく、誇りに思う」とコメントを寄せる。
セレモニーにはプレゼンターとして長谷部健渋谷区長が登壇。劇中では音が聞こえない世界を表現するかのように無音になるシーンが登場するが、「頭では分かっていても映像で見ると、改めて『そうだよな』と感じた」と触れ、「(劇中で描かれる)不便やちょっとしたユーモア含め、健常者が気付けない視点で描かれている」点を選定理由に挙げ、「子どもたちが見ていて分かりやすく、問いがあるが答えが無い終わり方もしているので、区民の方々に見てもらい何かを感じてもらえたら」と話す。個人的な感想と前置きしつつ、「現代を描いているとは思うがノスタルジックなテイストが良いなと思った」とも。
同プログラムではこのほか、一般の視覚障がい者の世界観をアニメで描く「音を見る物語」(高瀬裕介監督)、6カ国6人の車いすユーザーの一日を車いすの視点で撮影した「目の高さで」(Mauro Mueller監督)、アメリカで生活するドイツ人と中国人のカップルが計画外の妊娠の可能性に直面したことで互いの関係を見つめ直す「わたしたちを作るもの」(Sebastian Schnabel監督)など全8作品をラインアップ。作品は、オンライン会場で視聴できるほか、今月11日(19時30分~21時)には渋谷ストリーム(渋谷3)内のカフェ「TORQUE SPICE & HERB,TABLE & COURT」で上映する。
観覧無料(一部有料イベント有り)。今月20日まで(オンライン会場は今月30日まで)。渋谷区内の上映会場は、ユーロライブ(円山町)、表参道ヒルズ(神宮前4)内の「スペース オー」。