Bリーグ・サンロッカーズ渋谷(以下、SR渋谷)が5月8日、今季レギュラーシーズン最後の試合を戦い71-73で千葉ジェッツに惜敗した。
勝てばチャンピオンシップ(CS)出場の可能性が残っていたなか、伊佐勉ヘッドコーチ(HC)は試合前、選手たちに「(CS初戦の地)沖縄に行くのは我々だ、と強く言って」試合に臨んだ。
関野剛平選手の3ポイント(P)シュートで先制するも後が続かずビハインドを負うが、ケビン・ジョーンズ選手の連続得点で追い上げ、16-20で第2クオーター(Q)を迎える。序盤は「外でボールが回っている状態が続き」打った3Pが外れたほか、好守や千葉のミスも散見したものの、「慌ててプレーしているように見えた」(伊佐HC)とその後の攻撃が得点につながらない場面も見られた。それでも、「やってきたことを信じてプレーしよう」と試合に臨んだ広瀬健太選手や西野曜選手らがインサイドへアタックし得点を挙げ、32-40で折り返した。
第3Qに2桁リードを許したタイミングで伊佐HCはタイムアウトを要求し、「ディフェンスで守り切って、リバウンドを取ってから次に展開しよう」と送り出す。渡辺竜之佑選手は「前半は警戒され抑えられて厳しい状況だったが、行き続けよう」とリバウンドに飛び込み続け、バスケットカウント(得点に加えフリースロー)を誘発。ディフェンスリバウンドも「意識した」と取れなくてもボールを弾くなどしていた。
53-56で迎えた最終Qはベンドラメ礼生選手が攻守でアグレッシブさを見せ、序盤で試合を振り出しに戻す。一進一退の攻防が続くなか、高橋耕陽選手は身長のミスマッチを突いて得点を重ねた。残り12.5秒で4点差を付けらたが、3Pを狙いながら逆転を図ったが一歩及ばなかった。広瀬選手は「全部出し切れたが、勝って沖縄に行くつもりだった」と試合終了のブザーがなった後しばらくユニホームに顔をうずめていたほか、優勝に強い思いを持っていた田渡修人選手も目に涙を浮かべていた。
3月には連敗がかさみCS出場も遠のいたが、4月~5月に白星を積み重ね最終戦まで望みをつないだSR渋谷。広瀬選手は「チームとして成長できたのでは」と振り返り、伊佐HCも選手の努力に感謝の言葉を口にすると同時に「浮き沈みがあったが、最後は一つの方向を向いて(チームで戦うという思いを込めた)『結』の精神で、選手一人一人が全てをコートに注ぎ込むようなチームになったのでは。素晴らしいチームだった」と称え、「ファンの皆さんに応援して良かったと思ってもらえていたらすごくうれしい」と続けた。
ベンドラメ選手は、開幕当初にエースのライアン・ケリー選手がけがで離脱したことを「だいぶびっくりした」と振り返りつつ、「新しく入った選手がサンロッカーズらしい『ディフェンスからのチーム』を表現してくれたのは、『結』の精神じゃないが、一人一人が互いを助け合う気持ちがあったからこそだと思うし、シーズン終盤に形になってきたのは良かった。ムーさん(=伊佐HC)が作り上げた色、人の良さがここまでのチームを作り上げた」とも。
「あと一歩届かったのはすごく悔しい」としながら「サンロッカーズというのを表現して出し切れた」と清々しさも感じさせたベンドラメ選手。「コートに出たらチームを引っ張りたいと思っている。シュートを打つことは簡単だが決め切れなかった自分の力の無さを感じたし、そこは大きい。より良いシュートを作り出すゲームメイクが必要だったと思うが、ディフェンスやアシストでチームを引っ張ることができたのはキャプテンとして表現できたのかな」と自己評価した。
渡辺選手はこの日も追い上げる一翼を担うなど試合を重ねるごとに頼もしさを増した印象を受けたが、「少しは成長できたかな」と控えめな自己評価で「シーズンを通したらターンオーバーがちょっと多いかな」と課題を挙げた。今季は自他ともに「仲良し」と認める高橋選手が加入し一緒にコートに立つ時間も多かったが「楽しかった」とも。
コロナ禍で中止となる試合も多かったなか、SR渋谷はリーグ最多となる60試合中59試合を戦った。ベンドラメ選手は「誇りに思っている」と胸を張り、笑顔を浮かべながら「疲れた」とこぼした渡辺選手も「シーズンをしっかり戦えて良かった。クラブの皆が協力してやってきたので周りの人たちに感謝したい」と触れた。
今季は33勝中ホームで21勝(29試合中)を挙げたが、「すごく助けてもらった。あと一歩のディフェンス、あと一個のスチール(ボールを奪うプレー)もファンの声があったから取れたボールもあった」(ベンドラメ選手)、「どんな状況であれ常に温かく応援してくれるファンのみなさんの声援があったからこそ。結果は望んだものではなかったが、ファンの皆さんに支えてもらったシーズンだった」(広瀬選手)とファンへの感謝の言葉が聞かれた。渡辺選手は「皆さんと一緒に沖縄に行きたかったが負けてしまい申し訳ない気持ちはあるが、来シーズン、もっと良い成績を残せるように皆で頑張るので、応援お願いします」と呼び掛けた。