渋谷区立中央図書館(渋谷区神宮前1)4階に12月17日、「和田誠記念文庫」がオープンした。
2019年に亡くなったイラストレーター・和田誠さんの事務所から寄贈された書棚、打ち合わせテーブル、椅子などを並べ和田さんの仕事場の一部を「再現」したエリアとなる「和田誠記念文庫」。
1936(昭和11)年大阪生まれの和田さんは多摩美術大学を卒業後、1959(昭和34)年に広告制作会社「ライトパブリシテイ」に入社し、たばこ「ハイライト」のパッケージデザイン、NHK「みんなのうた」でアニメーションの制作などを担当。1968(昭和43)年に独立し、週刊誌「週刊文春」の表紙や、小説、エッセーの挿絵・グラフィックデザインなどを数多く手掛け、宇野亜喜良さん、安西水丸らと共に、日本のイラストレーション界を切り開いた一人として知られる。
和田さんは1978(昭和53)年に渋谷区に事務所と自宅を構えており、事務所は同図書館から徒歩圏内。そのような縁もあり2019年12月に、事務所から同図書館に和田さんの図書の寄贈と図書館の一角にコーナーの設置依頼があり、教育委員会での検討後、寄贈を受けることを決めた。コロナ禍などで予定より遅れたというが、当初は書籍のみの予定だったところ、書架や和田さんが打合せに使っていたテーブルなどの寄贈も受けることになり、「和田誠記念文庫」として設置した。
「和田誠記念文庫」の扉には、和田さんと妻の平野レミさんが共に牡羊座であったことから会社の表札や原稿用紙に使っている羊のマークをあしらった看板を設置。室内の書棚には、和田さんの自著本約400冊、装丁本約2000冊、資料コレクション約1200冊の計約3700冊を展示。色あせや劣化などを防ぐ加工を施したが、カバーをめくって表紙のイラストも見られるようにしている。書籍は貸し出しはしていないが、室内で閲覧することができる。
オープンに合わせ2階では「和田誠さんってどんな人?」と題した関連展示を実施。和田さんの経歴や手掛けてきたロゴなどをパネルで紹介するほか、使っていたペンの展示、元となった資料と作品の比較展示なども行っている。2022年1月19日まで。
勝部弘樹館長は「区にゆかりのある和田誠さんの著書や所蔵していた資料を収集・保存し、区民をはじめ広く公開することは、地元の図書館として行う意義があると考え、和田誠記念文庫を開設した。和田さんが打合せで使うためにあつらえたテーブルと椅子に座って、所蔵していた本をお楽しみください」と呼び掛ける。
開館時間は9時~21時(日曜・月曜・祝日は18時まで)。毎月第1月曜・第3木曜は休館。