岡山発ブックカフェ「うのまち珈琲（こーひー）店 渋谷店」（TEL 03-6416-9554）が7月、西武渋谷店（渋谷区宇田川町）A館・地下1階にオープンした。

「SNSでシェアされる」ことも意識して開発するメニュー

　岡山生まれ・育ち、在住の小田墾（つとむ）さん（35）がオーナーを務める同店。高校卒業後、20代前半で友人らとカフェを開いたのをきっかけに、複数のカフェや雑貨店（現在は閉店）、イベント企画などまちづくりに関わる取り組みを行ってきた。「うのまち珈琲店」は2017（平成29）年、県内のショッピングモール「メルカ」のリニューアル時に1号店を出店。同モールは館内に市立図書館を併設しており、図書館に隣接した区画に位置することから「ブックカフェ」という業態を施設側から提案を受け初めて手掛けた。店名は、モールの所在地「宇野」にちなみ命名。宇野は高齢者が多いことから分かりやすく平仮名と漢字を組み合わせた。

　県内（2店舗）、奈良（1店舗）に次ぐ4店舗目で、東京初出店となる同店。地元では「友達が多く」助けも受けながらビジネスを展開してきたが、「そういった力が働かないところに行ったらどうなるだろう」と考えていたことや、大阪や広島など県外からも来店していることをSNSを通じて把握していたことから、「外（県外）に出ても成り立つのでは」と奈良に出店。今回、施設側から出店の依頼を受けたなか、「本当に地方のカフェなのでゆくゆくは都会に出たいと思っていたが、いきなり渋谷って面白いな」と考えたほか、「SNSで知って来て下さることが渋谷でも成り立つのでは」と出店を決めた。

　店舗面積は52坪で、席数はコロナ禍ということもあり余裕を持たせ40席を用意している。居抜きでの出店で、レンガ調の壁面や木調の家具などは旧店のものをそのまま使う。百貨店内に位置することから、完全に区切られた空間にはできなかったが、設置した壁の高さにはこだわったという。BGMはアンビエント（環境音楽）系のものを中心にかけている。

　書籍は約1000冊を用意。小田さんや「本好き」のスタッフがセレクトしたと言い、古本、文庫、小説、エッセー、サブカルチャーやスポーツ関連の書籍など幅広くラインアップ。「本をあまり読まない人でも気になるようなタイトル」や、芸人・世界のナベアツ（桂三度）さんの写真集「3の倍数と3がつくページだけアホになります」など「紙であることに価値がある」書籍も選んでいるという。同店では「コミュニケーションツールとしてのしおり」を導入している。普通のしおりとして使えるほか、自身の名前やSNSアカウントを記入することができ、共通の趣味を持った人同士など、新たなつながりを生むきっかけにもなるようにしている。

　カフェメニューは、「SNSでシェアされる・刺さるものは大事」と見た目やストーリー性を持たせることを意識しているという。主力メニューは「クレームブリュレの季節のパフェ」（1,000円、要ドリンク1オーダー）で、グラスの中にはホイップやバニラアイス、ミルクプリンなどを詰めているが、見た目は白のワントーンでまとめ、間に入れる季節のフルーツ（現在はグリーンキウイとマスカット）が彩りを添える。最頂部がクレームブリュレになっている。

　そのほか、深いりの豆を使うコーヒー（350円～）や紅茶（450円～）などのドリンク、メープルバタートースト（400円）、カレー（850円）などのフード類も用意。季節で3種類程度の味を用意するクリームソーダ（700円）は、グラスの底にシロップを、その上にソーダを入れる2層に仕上げ、バニラアイスとサクランボを添えて提供。「ツートーンラッシー」（800円）は名前の通りヨーグルトの上にフルーツスムージーを入れツートンカラーに仕上げている。現在は青リンゴ×マスカット、パイン×マンゴーなどの味を用意する。客単価は1,000円程度。

　「誰でも使えること」をコンセプトにしているといい、特に宇野や奈良の店は地域の年配の方とSNSを通じて知って訪れる若い女性が混在しているという。渋谷店は、SNSを見て足を運ぶなど目的客の若年層の来店が多いという。小田さんは「渋谷は忙しそうなイメージで、ゆっくりできる空間があまりないような印象を持っている。そのなかで、一番ゆっくりできる空間ではありたい。そういう目的で足を運んでいただけるような店にしたい」と話す。

　現在の営業時間は11時～20時。