「街づくりのDX(デジタルトランスフォーメーション)」の実現を目指し、東急(渋谷区南平台町)は7月1日、新組織としてデジタルプラットフォーム準備プロジェクト「URBAN HACKS(アーバン・ハックス)」を設立した。
東急線の利用者は年間11億人、沿線に暮らす人々は500万人を超える。鉄道事業のほか、ホテルや百貨店、映画館、ウエルネス事業、カード、電力会社など200社を超える東急グループのリソースは幅広い領域に広がっているが、十分に活用しきれていない現状がある。そこで新組織であるデジタルチームの発足に伴い、グループの領域を横断する顧客視点のサービス開発や、体験設計を実行する組織体制を構築していくという。
陣頭指揮を執るのは、前職の日産でデジタル組織の立ち上げ経験を持つプロジェクトオーナーの宮澤秀右さん。東急沿線にデジタルをフル活用した街づくりを実現するため、今春、東急に入社。わずか3カ月で新組織を設立し、他に例のない「街づくりのDX」という大きな挑戦に挑む。記者発表に登壇した宮澤さんは「私も東急沿線に暮らしているが、鉄道、百貨店、ストアなどでそれぞれアプリがあるが、顧客からすればデジタル接点がバラバラで最適とは言えない」とし、年間11億人が利用するリアルな顧客基盤を利用し、「デジタル×リアル」を駆使したサービスの提供で「世界一住みたくなる沿線を目指したい」と高い目標を掲げる。
本格的な始動に向け、3つの活動方針を示す。1つ目は「『人の暮らし』につながるエンジニアリングの実現」とし、顧客中心のサービスデザインや体験を最大化するため、新しい顧客価値を創造するソフトウエアの開発を進めていくという。2つ目は「大企業の安定性と、スタートアップの挑戦力」とし、大企業になると新しい取り組みを行うのに時間が掛かるが、今回の新組織は異例のスピードで実現。同プロジェクトにはスタートアップのような技術と才能を生かす環境、柔軟な考えが必要である点を挙げる。最後は「徹底した『内製開発』で意味あるサービス」を掲げ、「我が事」として顧客に寄り添いながらスピーディーに完成に向け高めていけるプロフェッショナルな人材採用を進めていくという。
内製開発に向けたチーム体制を整えるため、「街づくりDX」に挑戦したい高度ソフトウエア・エンジニアリング人材を外部から広く募集する。主な職種はCTO候補、デザインマネジャー、サービスデザイナー/UX、エンジニアリングマネジャー、UIなど。10月ごろまでに10人規模のチーム作りを目指し採用を行う。活動拠点は「渋谷スクランブルスクエア」(渋谷区渋谷2)内の「WeWork(ウィーワーク)。数年後には50人規模、将来的には子会社化も視野に入れているという。