緊急事態宣言に伴い1月から延期が続いていた写真プロジェクト「10年目のITO PROJECTのアーカイブ写真展/撮影会」が6月11日、渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2)8階・8/ATELIERで、ようやく始まった。
ITO PROJECTを10年続ける写真家・コセリエさん 渋谷ヒカリエ会場で
鹿児島出身の写真家・コセリエさんが、大事な友人が亡くなったのをきっかけに2010(平成22)年にスタートした同プロジェクト。「友人との時間や出会いを思い出し、命の尊さをつないでいける作品を作りたい」という思いから、「糸=絆、つながり」をシンボルとした人物写真を撮り始める。糸を両手で持ったり、頭上に載せたり、歯でかんだり、「糸に触れてもらう」というルール以外は全て自由で、参加者が思い思いのポーズで撮影に臨む。初めは悲しみを経験した家族や友人に寄り添う活動として始めたが、出会った人々との縁が徐々につながり、10年続く写真プロジェクトに成長。主に鹿児島や東京を拠点とするほか、岩手や宮城、タイでも撮影会を行い、今までに参加した人数は、生後3日の赤ちゃんから90歳まで延べ約6000人に上るという。
この10年の活動を振り返り、コセさんは「長くやっているので、撮影した人が既に亡くなっていることもある。以前、写真展を開いた時に、たまたま通り掛かった人が写真の中に親しい人を見つけて涙を流していた」と言い、同プロジェクトが引き寄せる偶然に驚かせされることが多いという。さらに「今回の展示も、ヒカリエ担当者がたまたま写真展に来てくれたことから始まった。このプロジェクトで出会った人から、次の展示や展開が決まることも多く、今後どうなるか分からない(笑)」と、自然に身を任せつつ、プロジェクトがもたらす出会いや偶然を楽しんでいるという。
同日、撮影会に初めて参加した女性2人は「学生時代からの友達だが、こうして2人で写真を撮ったのは初めて」と照れながらも楽しんで撮影に応じていた。撮影時間は10分程度。パソコンに取り込まれた画像の中から1枚を選び、その場ですぐにプリントアウトし、会場内の白い壁面に掲出していく。その写真の隣には、見知らぬ誰かの写真が次々に並んでいくが、全ての写真は「1本の糸」でつながる。今までに縁のなかった人々が撮影会をきっかけに、見えない新しいつながりを形成していく。
10年目の節目を迎える同展では、ITO PROJECTの撮影会、過去に撮影した約100点の写真展示のほか、ポートフォリオやブックなどでプロジェクトの活動をまとめたアーカイブを紹介する。
「緊急事態宣言で延期、延期が続き、やっと開催できてうれしい。今まで参加してくれた人にぜひ来てほしい。何年か一度、撮影に来る方もいて、数年前の自分の糸に新しい写真をつげる人もいる。もちろん、通りすがりの方に参加してもらっても構わない。今まで感じなかった人とのつながりを、誰かを通して感じてくれたら」と参加を呼び掛ける。
開催時間は11時~20時(最終日18時まで)。入場・参加無料。今月16日まで。