難民からオリンピック選手になったグオル・マリアルさんのドキュメンタリー映画「戦火のランナー」が6月5日、シアター・イメージフォーラム(渋谷区渋谷2)で公開される。
グオル・マリアルことグオル・マディング・マケアさんは、1984年にスーダンで誕生。戦争が続くなか、両親は息子の命を守るため8歳だったマケアさんを一人村から逃がすが、村を襲った武装勢力に捕まってしまう。それでも、監視の目を逃れ逃げだした後、4年間1人で放浪し、難民キャンプにたどり着く。2001年、再会した親族とアメリカ難民受け入れ制度に選ばれアメリカに入国した。
高校に通い始め、陸上部に入部すると「他を圧倒」。兄が殺されたことを知り陸上を辞めることも考えたが、大会で成績を残し続けることを決め大学にも進学した。2011年、初めて走ったマラソンで2012年のロンドン五輪出場条件タイムをクリアし、出場資格を得た。しかし南スーダンが建国されたのも同年で、国内オリンピック委員会が無く、代表する国がなかった。出場は困難に思われたが、IOCの会議で行われた投票の結果、個人参加(IOA、Individual OlympicAthletes)としての出場が決まり、南スーダン人の声援も受けながら完走を果たした。その後、南スーダンオリンピック委員会が設立され2016年のリオデジャネイロ五輪では南スーダン選手として出場。閉会式では旗手も務めた。
メガホンをとったのはビル・ギャラガーさん。アカデミー賞にノミネートされたドキュメンタリー「IF A TREE FALLS」ではライン・プロデューサーを務めるなど経験を積み、本作で初めて監督を務め、7年かけて製作した。2019年の「ウッズホール映画祭」観客賞など複数の映画祭で賞を受賞している。ギャラガーさんは同作を「私たちに『選択』する力があることを示している」と言い、「不幸な出来事の数々を高みに目指すきっかけにした。彼の姿は南スーダン国民ならず世界中の人々を勇気づけている」とコメントしている。