5月20日で閉館する渋谷のミニシアター「アップリンク渋谷」(渋谷区宇田川町)で、閉館前最後の新作興行作品となるドキュメンタリー映画「裏ゾッキ」が同14日から公開される。
漫画家・大橋裕之さんの短編集を、俳優の竹中直人さん、山田孝之さん、斎藤工さんが共同監督を務め実写化したヒューマンコメディー「ゾッキ」の製作の舞台裏を追った同作。
昨年1月の撮影準備から今年4月の公開、撮影地・愛知県蒲郡市の凱旋(がいせん)上映までの500日間の追い掛け、製作過程で起きたハプニングや、映画の撮影舞台となったことで「大騒ぎになる」蒲郡の町、「奮闘する」市民の姿など撮影の裏側を描くコメディーとなるはずだったが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う緊急事態宣言が発出され、映画館が休業になるなど映画業界も打撃を受けた。同作では、「いま、映画は必要なのか?」をテーマに、製作に携わる人たちの困惑や葛藤を捉えた。撮影・編集・監督は、テレビドキュメンタリーを多く手掛けている篠原利恵さん。
同シアターでは同日から、「ゾッキ」と「裏ゾッキ」の交互上映を行う。「裏ゾッキ」のプロデューサーの伊藤主税さんと山田さんは2019年10月に、同シアターで「デイアンドナイト」(藤井道人監督)と、その舞台裏を捉えた「TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY No Pain, No Gain」(牧有太監督)の交互上映イベントを行っていたことから、今回の交互上映を企画した。
伊藤さんは「僕らだけでなく、映画人にいつも寄り添い続けてくれたアップリンク渋谷が閉館すると伺い、多くのクリエーティブに関わる方々が心を痛めた事と思います。今後の我々の映像文化の発信に大きな影響があることは間違いないです。しかし、ぼくらは映像文化の発信を止めてはけない。何故なら『映画は必要だと思うから』。(中略)作品を通じて物作りや作品に対する思い、もはや意地みたいなものを伝えさせていただきます。アップリンク渋谷と過ごした時間を次につなげていくために」とコメントを寄せる。
アップリンク渋谷は、1995(平成7)年に開館したイベントスペース「アップリンク・ファクトリー」が前身となり、2006(平成18)年に誕生。「設備や機材の老朽化による再投資を考えなければならない時にコロナ禍に襲われ」たなか、配給作品の見放題サービスを始めるなどしたが、「さすがに限界を超える状態」となったことから閉館を決めた。
鑑賞料は一般=1,900円ほか。上映は同20日まで。