渋谷・神宮通りのJR線の高架(渋谷宇田川架道橋)下に3月、災害時に帰宅困難者を「一時(いっとき)退避場所」に誘導する「矢印サイン」が完成した。
区の商店会連合会や渋谷駅周辺帰宅困難者対策協議会、観光協会などで構成する実行委員会が渋谷区と共催する「シブヤ・アロープロジェクト」の一環。
2017(平成29)年に始まった同プロジェクトは、今夏に控える東京オリンピック・パラリンピックを機に、さらに増えることが予想される外国人を含めた多くの来街者に、渋谷区の一時避難場所(青山学院大学、代々木公園)の位置を認知してもらうのが目的。これまで、渋谷キャスト(渋谷区渋谷2)前や、神南郵便局前交差点と宮下公園交差点をつなぐJR線線路の高架下など4カ所に「矢印サイン」を掲出している。
来街者に認知してもらうため、発災時だけでなく日頃から人々の注目を集めるような「アート性あふれる」デザインの「矢印サイン」を採用し、一時的に退避する安全な場所への誘導を支援する。
今回アートを掲出した高架下の一面には、既にアートディレクターの森本千絵さんが作品を描いている。その対面の壁面に掲出する作品を手掛けるのは、音楽と絵画制作を手掛ける伊藤陽一郎さん、瞳を描かない女性を描くことで知られるアーティストの大竹彩子(さいこ)さん、主に凹版印刷の一種「エングレービング」のような画風の作品を手掛けるNABSFさん、グラフィックアートユニット「エンライトメント」代表のヒロ杉山さんの5人。指し示す「一時避難場所」は代々木公園となる。
NABSFさんは、方向を指し示す記号である矢印を「もっとも原始的なものは何だろう」と考え思い付いた「指さし」で代々木公園を指し示した。道行く人の視界に入るよう「シンプルでカラフルな絵を心掛けた」と言う大竹さんは、矢印を「非常時を表す赤から安堵を表す青へ」変化させて描き「みんなの頭に浮かぶ大切な誰かの元へ無事に帰ることができるよう祈りを込めた」。ヒロ杉山さんは、黒い壁面にシルバーのストライプを描きマスクを表現した上に、さまざまな国の頭文字、人の名前など「世界中」という意味を込めたアルファベットで矢印をかたどり、新型コロナウイルス感染症収束の思いも込めた。