東急は、定額で国内各地のホテルなどに滞在できるサービス「tsugi tsugi(ツギツギ)」を開始する。
同社の「社内起業家育成制度」から誕生したサービス。2016(平成28)年度の税制改正で通勤手当の非課税上限を付き15万円に拡大されたことを機に、当時、経理を担当していた同プロジェクトのリーダー川元一峰さんが、「新しい暮らし方=職場に縛られない、いろいろな町を巡る暮らしができるのでは」と考えた。
2018(平成30)年に一度事業提案をしたというが、当時はホテルの客室を確保することなどが難しく実現しなかった。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行に伴いテレワーカーが増えたことなどを受け、2020年度に入り再び事業化に向け動き出し、昨年12月に社内で承認を得て事業化に至った。
各地を「旅するような」暮らし方の提案や、契約期間や初期費用など住み替えのハードルを無くすことで「柔軟な移動」を促したい考えで、利用者は「身軽な単身のテレワーカー」をボリュームゾーンに想定しつつ、セカンドライフの夫婦などの利用も見込む。
第1弾として東急ホテルズ・東急シェアリングと連携し先行体験を始める。利用できるのは渋谷エクセルホテル東急や渋谷ストリームエクセルホテル東急、渋谷東急REIホテルといった渋谷エリアのホテル3施設をはじめ、北海道から沖縄までの全39施設。空室状況にもよるが各施設1泊~60泊(30泊プランは30泊)まで自由に宿泊期間を設定できる。利用できる部屋のタイプはダブルまたはツイン(定員2人の部屋)。サービス利用者専門の予約サイトから宿泊予約を受け付ける。
プランは30泊(素泊まり18万円)と60泊(同36万円、いずれも同伴者1人まで追加料金無し)で、土休日や大型連休でも追加料金無し。宿泊開始日は30泊=5月29日~6月1日のいずれか、60泊=4月29日~5月2日のいずれか。現在、体験希望者をウェブサイトで募集している(30泊は5月9日まで、60泊は今月16日まで)。定員は計100人(各プラン50人)。
定期的な部屋の掃除やリネン交換などのホテルサービスに加え、レストランやバー、ランドリーサービスは10%オフ、ルームサービスは25%オフで利用でき、会員制ラウンジを無料開放すると共にコーヒーサービスも用意。施設間移動費のサポートとして、サービス利用者にはチェックイン時に、チャージ済み(30泊=3,000円、60泊=6,000円)のPASMOを進呈する。
先行体験では、サービスの需要や、利用層やその人たちの生活実態、どの土地に足を運ぶのか、その移動ルートや手法などを洗い出し検証。同時に、東急グループ以外を含めた宿泊施設の拡大・拡充、シェアサイクル・カーシェアなど宿泊施設周辺の2次交通サポート、スーパーマーケット「東急ストア」や宅配サービス「東急ベル」などと連携した衣食住のサポート、利用者間の情報交換ツールの構築、地域コミュニティーと利用者をつなぐ機能などの準備も進め、都度サービスを付け加えていく。
川元さんは「旅や観光として訪れるのでは無く、日本各地に地元をいくつも持つ感覚。好きな時に気軽に行ける、そんな生活ができるようになれば」と話す。参加ホテルの一つ、渋谷ストリームエクセルホテル東急は、現在は「持ち直しつつある」というが、コロナ以前はインバウンド客の需要が高かった事もあり稼働率は低減。そうしたなか、同サービスには「新たなニーズの創出ができるのであればうれしい」(杉野仁美(さとみ)総支配人)と期待を寄せる。
同サービスは継続していく考えで、重大な問題が無ければ先行体験期間終了後の7月以降の利用者も順次募集していく。