ロックバンド[Alexandros](アレキサンドロス)の元ドラマー・庄村聡泰さんらが今春、渋谷・初台でファッション・プロジェクト「SNACK NGL(スナック エヌジ―エル)」を立ち上げた。運営はリノウン(渋谷区代々木4)。
3月にバンドを「勇退」した庄村さん、同社社長でスタイリストの有本祐輔さん、有本さんの幼なじみで大手セレクトショップに13年勤めていたマーチャンダイザー近藤良大さん、同じセレクトショップで15年バイヤーをしていた山口翼さんの4人がコアメンバーとして展開する同プロジェクト。
庄村さんが「局所性ジストニア」のため2019年からライブ活動を休止して以降、多くの友人が「飲みに行こうと声を掛けてくれた」と言い、その一人が有本さんだった。2人は同世代で「邦画やサウナが好き」という共通点もあり、7年来の「飲み友達」という。飲みの場で、「最近やっていることやかっこいいと思っているもの・こと」などを話すなかで「アイデアを持ち寄って形にしてみたら面白そうだからやってみないか」と有本さんが庄村さんを誘ったことがきっかけでプロジェクトが始動した。
バンド加入前はアパレルショップで働いていた庄村さんにとってファッションは、「空想・妄想が好きで変身願望が強く、それをかなえてくれる自己表現のアイテム」で、そのファッションセンスはバンドマン時代から知られていた。自身でアパレルブランドを展開する考えは無かったというが、「友達と飲みながら『あれやりたいよね、じゃあ、やっちゃう?』というのはありだった」という。新たな道に進めたのは「バンドメンバーや事務所、ファンの皆さんが長期間休むことを認めてくれ、今後やあらゆる物事について考える猶予を与えてくれたおかげ」と感謝の言葉を口にし、「ドラムがたたける自分より音楽が好きな自分が大事だった。(メンバーたちに)ドラムがたたけない自分を受け入れる覚悟を伝えたら、『お前のことだから何か面白いことやるんだろ』と尊重してくれた」と振り返る。バンドを「勇退」すると発表後、真っ先に仕事を依頼してきたのはアレキサンドロスだったとも。
プロジェクトの拠点となる初台は有本さんが慣れ親しんだ街で、今回、渋谷区の北側に位置することから同エリアを「北渋」(ホクシブ)と名付けた。有本さんは「コアな飲食店が多く、渋谷で一番ディープかつドープ。盛り上げたいという気持ちがめちゃくちゃある」と意欲を見せる。
有本さんがスナックに足しげく通っていることや、「地元の人たちが集まるスナックのような存在になりたい」と、スナックからライフスタイルの提案を図る。月1回、新作をECで発売するとともに、スナックを間借りしてポップアップショップも展開する予定で、4月3日には初のポップアップショップを、有本さんが通う初台駅近くのスナックに出店(住所非公開)。東京では初台だが、地方でも展開していく考えで、新型コロナウイルス感染症が収束した際には、ショップとしての営業終了後はスナックとして客らと飲み・語ることも行っていきたいという。
主な商品はリメークの「継(つぎ)る」と、包むアイテムの「包(ばお)る」。「継る」は「継承」「次」などから、「包る」は中国語で包むを意味する「包(ぱお)」や、バンド「四人囃子(ばやし)」のアルバム名やディズニー・ピクサーの短編作品名から命名。古着や廃材を取り入れるが、「SDGsやサステナブルもあるが、俺らが忘れたくないものを継いで、誰かを何かを包(ばお)ってほしい」(庄村さん)という思いを込めた。商品は、「継る」=複数のアウトドアブランドの古着をパッチワークしたナイロンブルゾン(3万9,600円)など。「包る」=デニムの古着をリメークしたスプレーケース(6,600円)など。そのほか、スニーカーをかたどったキャンドル、庄村さんがセレクトする輸入ビンテージポスターなども展開する。
庄村さんは「自分はこういうことで自分の表現を転換できた。皆抱える思いがあると思うが、吐き出し方にも多様性があって良いことを伝えていけたら」と言い、有本さんは「スナックの面白さを若い人にも知ってもらいたい。洋服屋さんとして入ってきてこういう場があるんだという間口の広げ方ができれば」とも。