Bリーグ・サンロッカーズ渋谷(以下、SR渋谷)が3月7日、アルバルク東京(同、A東京)と戦い84-82で競り勝った。
SR渋谷は左頬骨を骨折したライアン・ケリー選手の復帰戦となったこの日。1月の試合で負傷したケリー選手はすぐにアメリカに帰国し手術を受け、再来日。隔離期間もあり練習には5回ほどしか参加できていないなかで試合を迎えた。負傷部分にはチタンプレート2枚が入っており、痛みなどは無くプレーに支障は無いが、フェースガードをしてのプレーに視野が狭まるなど影響があるという。
前半はシュートが決まらず0得点となるが、「次は絶対に決めると自信を持って」シュートを打ち続け、後半だけで14得点をマーク。なかでもラスト2点は勝利を決める大きな得点となった。82-82で迎えた残り4.5秒からSR渋谷の攻撃。伊佐勉ヘッドコーチ(HC)はケリー選手の1対1を指示。トップでボールを受けたケリー選手はマッチアップしていたA東京のデション・トーマス選手が「ドライブ(リングへのアタック)を予測し下がり気味にディフェンスをしていた」ことからサイドにドリブルを付き3ポイント(P)ラインでシュートモーションに。トーマス選手が「(間合いを)かなり詰めてきた」ことからフェイクを入れファウルを誘い、残り0.5秒で3本のフリースローを得た。
最初の1本を決めたケリー選手は「勝利は自分の手の中にある」という意味を込め「This is my time!」とベンチに向かい叫んだ。残り2本中1本を決め勝利を引き寄せた。試合終了のブザーが鳴ると、真っ先にケリー選手に抱きついた伊佐HC。「最後はエースらしく決めてくれて…お帰りという思いだった」と振り返った。石井講祐選手は「あのような場面でライアン落ち着いているなと(笑い)。ファウルをもらって確実なゲームクロージングをできるのはすごいこと」と賞賛した。
試合の立ち上がりは、先制点を挙げたSR渋谷・関野剛平選手が3Pなど得点を重ねたほか、第1クオーター(Q)中盤でコートインした石井選手はボールを奪うプレーから得点を挙げると、その後3Pを連続で決めた。SR渋谷が11点リードして迎えた第2Qは、一進一退の攻防が続くなかSR渋谷は広瀬健太選手がA東京・津山尚大選手のレイアップシュートを後ろからブロックする気迫のこもったプレーを見せる。同Q終盤には石井選手がワイドオープンで3Pを決めたが、ディフェンスがインサイドに寄っていたことから「正しくポジション取りすればチャンスがあると思っていた」という。A東京は「(SR渋谷のディフェンスを)セットオフェンスであまり崩すことができず、自分が縦に切っていくことで流れを変えられると思った」と小酒部泰暉(おさかべ・たいき)選手が速攻などから積極的にリングへアタックし5点差に詰めよって前半を終えた。
第3Q中盤にはA東京が逆転したが、SR渋谷はジェームズ・マイケル・マカドゥ選手のダンクシュートを演出するなど広瀬選手が連続でアシストし再びリードを奪う。最終QにはA東京が堅守を見せ、約4分SR渋谷の得点を抑え一時6点リードするが、SR渋谷がケリー選手の得点などで点差を詰め残り約1分40秒でゲームを振り出しに戻す。残り約31秒にはケリー選手がシュートブロックで攻撃のチャンスをつくると直後のプレーで自ら得点を挙げ82-80と一歩抜け出す。A東京は残り約6秒からのセットプレーで小酒部選手の得点で同点に追いつくが、SR渋谷のケリー選手がフリースローを決め84-82勝利。SR渋谷は連敗を5で止めた。
会場では、ケリー選手の復帰を祝い「Welcome back」と書いたボードを掲げるファンの姿も見られたなか、「ホームでプレーできするのは気持ちが良かった」と振り返ったケリー選手。「100%のコンディションでも無い状況だが、コートにいる限り全力でプレーすることは前提条件であった。残り約3分でムーさん(=伊佐HC)が『まだプレーできるか』を聞いてきたが、絶対に勝ちたかった」とエースとしてコートに立ち続けた結果が最後のプレーにつながった。
終盤でビハインドを負ったなか「ハドル(円陣)をたくさん組み、励まし合い戦う意識を持てたことが、崩れずに接戦を勝利できた要因」と挙げた石井選手はこの日、チーム最多の19得点をマーク。連敗中は得意の3Pも伸び悩み「責任や反省点があると感じていた」が、2・3試合前から「得点を取ることにメンタルが向いていたが、ディフェンスなどシュート以外のプレーも含め『チームに良い流れを持ってくること』が自分の強み・役割と再確認しプレーするようになったことで良い感覚を掴めてきていた。それが得点にも良い影響を与えているのかな」と自己分析する。加えてこの日は「相手のファウルや審判の笛など対外的な要因に感情を左右されないよういつもより意識した」とも。
両チームのレギュラーシーズンでの対戦は8日の試合で最後で、順位を争う上でも大事な一戦となる。これまでの3戦の結果はSR渋谷が2勝1敗と一歩リードしたが、得失点差ではA東京が上待っていることから伊佐HCは「我々は勝つしかない」と闘志を燃やす。