奥渋谷に本店を構える「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(以下、SPBS)」が4月、渋谷の街なか(飲食店やホテルなど)に小さな本屋(一箱支店)「SPBS THE BOX」を展開し、各支店長と共に本を通じたコミュニティーを育てていくプロジェクトを始める。
2019年11月に解散した「渋谷区100人カイギ」の運営メンバーが中心となり2020年5月に結成された任意団体「SMALL STANDARD SHIBUYA(以下、SSS)」との協働による同プロジェクト。SSSは渋谷を起点とし、「対話の場をつくる」「営みが生まれる」「営みがつながる」の3つの活動を通して、常識を再定義したり新たな価値を発見したりしながら、個人の「やってみたい」から始まる小さな営みづくりに取り組んでいる。
「BOX支店長」の選書による10冊ほどの本を並べた箱を「一箱支店(SPBS THE BOX)」と名付け、小さな本屋と見立てる同プロジェクト。BOX支店長はSPBSでの選書トレーニングを受け、各BOXが置かれるショップに合わせた本をセレクト。BOX支店長とBOXを置くショップとのコミュニケーションから生まれた選書を基本とし、購入客はSNSやサロンを通じて本の感想を共有。「それを読んだ人同士がつながりながら、本がコミュニティーの媒介になっていく」ことを目指す。
SPBS本店でエントリー(3月予定)した後、あらかじめ購入した専用チケットで「SPBS THE BOX」の本を買うことができる。併せて、「店主」(ショップ等のオーナー)、「BOX支店長」「読者」が参加できる交流の場「SPBS THE BOX SALON」を開設し、フェイスブックグループやオフラインの場で本の感想などをシェアする仕組みづくりも予定する。
プロジェクト開始に先立ち、12月から1月にかけて「BOX支店長」希望者を募集。「THE BOX」に置く本を選書するためのトレーニング&ワークショップが2月21日、オンラインで始まった。受講者は20~50代の「本好き」な10人。初日は、SPBS本店店長らから本の流通についての基本的な知識と選書のレクチャーを受けた後、チームに分かれ実際の店舗(奥渋谷の自然派ワインバー「アヒルストア」)を題材にして選書を体験した。次回トレーニングからは実際に店に足を運んで観察したり、店主から場所について話を聞いたりしながら、テーマを検討し選書を進めていくという。
「書店の持つ『予期せぬ出合い』を街なかにも仕掛け、本と本、本と人、人と人がつながるきっかけを生み出したい」と期待を込めるのはSPBS担当の工藤さん・黒澤さん。SSSの金川さん・柳川さん・木継さんは「渋谷区100人カイギでは、渋谷で活動する人たちを緩やかにつなげる取り組みをしてきたが、SSSでは、個人だからこそできる『小さな営みをつくる』活動を始めた。まちを通じて、本を通じて、どのように人と人のつながりができていくか。この実験的な取り組みにぜひ、読者として参加していただれば」と呼び掛ける。