コロナ禍で「おうちクリスマス」が注目される中、渋谷在住のシンガー・ソングライター、横沢ローラさんが12月2日、渋谷区観光協会公認のクリスマスミニアルバム「Shibuya Christmas Carols(シブヤクリスマスキャロル)」(全5曲)とクリスマスカード(全5種類)の無料提供を始めた。
横沢さんはボストンのバークリー音楽大学で学び、2011(平成23)年に帰国。その後、シンガー・ソングライターとしてソロ活動するほか、ピアニスト工藤拓人さんとのユニット「オノマトペル」として、各地の伝承文化、民話、寓話などからインスパイアされた音楽づくりを行い、全国各地で精力的にライブ活動を続けている。
渋谷との関係は、渋谷・キャットストリート沿いの複合施設「渋谷キャスト」(渋谷区渋谷1)13階にある共同コミュニティー「Cift(シフト)」に2018(平成30)年に入居してから。西東京市出身ながら中学3年生から海外で過ごし、「今まで自分の地元と思える居場所が無かった」と言い、クリエーターたちと交流しながら暮らす同コミュニティーでの生活を通じ「渋谷への地元意識が芽生え始めた」という。
今回、「渋谷発クリスマスソングを作ろう」と思い立ったきっかけは「コロナ」だった。渋谷キャストのハロウィーン企画として、子どもも参加できる無料イベントを昨年末から企画し準備を進めてきたが、コロナ収束の気配が見えず、今年8月ごろに開催を断念。ライブ活動などが全く行えない状況下で、今だからこそ何か発信できることがないかと考えた時に「アメリカ生活で知った『クリスマス・スピリット』という言葉」が頭に浮かんだという。「自分ができることをちょっとシェアして、そのシェアが広まることで、クリスマスシーズンに皆がちょっとずつ幸せになるという考え。私にできるのはライブか、作曲か、絵を描くことくらい。ライブができないなら、絵を描いて曲を作って皆にプレゼントしよう。直接手渡しでなくても、LINEなどで曲をシェアしてもらえば、時間や空間は共有できないけど、曲と一緒にその時の記憶を共有できるのでは」とクリスマスソングのシェアギフトを決める。
渋谷キャストの協力を得て、本格的に曲作りを開始。まず横沢さんは、渋谷に深く関わる人々との思いや本音を聞くことから始めたという。自らが共同生活するシフトの住人をはじめ、渋谷区議や駅周辺の再開発工事に長年携わる人、渋谷区観光協会の人、キャットストリートやマルシェなどで働く人、昔から渋谷で暮らす商店街の人など約20人に、それぞれ1時間程度のインタビュー取材を行う。その中で多くの人々に共通して出てきたキーワードが「ホーム」だった。「故郷という意味だけではなく、ホームベースやホームステージ、ホーム・アンド・アウェーのホームだったり、駅としてのプラットホームだったり…。仮に通過点だとしても、自分の大切な場所を指すワード」として「渋谷=ホーム」と捉えている人が多かったという。
そうした渋谷の人々の言葉やニュアンスをくみ取りながら、横沢さんは、音楽ユニットを一緒に組むピアニスト工藤拓人さんと、「小さなトロルのクリスマス」「Scramble Land(スクランブルランド)」など、「渋谷」を舞台にした5つの物語を5曲のオリジナルソングに仕上げる。コーラスとして、渋谷キャストに隣接する渋谷教育学園渋谷中学高等学校の「渋渋合唱部」が2曲に参加するなど、「オール渋谷で作るクリスマスソング」を意識したという。
さらに曲ごとの物語の世界観に合わせ、横沢さん自らがイラストを描いた5種類のオリジナルクリスマスカード(クリスマスソングがダウンロードできるQRコード付き)も制作。ハチ公前広場の観光案内所「SHIBU HACHI BOX」や渋谷キャストのカフェ「オーレ」、キャットストリートのカフェ「CHOP COFFEE(チョップコーヒー)」などでクリスマスカードを無料配布する。
「今年はおうちクリスマスで、渋谷で集まってパーティーは行えません。もしかすると、おうちで一人になっちゃう人もいるかもしれませんが、それを寂しいと思わず、ぜひクリスマスソングを聴いてすてきに過ごしてほしい」と呼び掛ける。
クリスマスカードの配布は今月25日まで、特設サイトからのダウンロードは今月26日ごろまで。