渋谷区を拠点とするサッカークラブ「TOKYO CITY F.C.」が、来シーズンから「SHIBUYA CITY FC(渋谷シティFC)」に改称する。11月11日に行われた「ソーシャルイノベーションウイーク渋谷」で明らかにした。
2014(平成26)年、中学から大学まで青山学院に通っていた社長の山内一樹さんらが設立した同クラブ。多様性やフラットな関係性など「ソーシャルな価値観」を持った人たちが集まり、「ワクワクし続ける渋谷をフットボールで」とのビジョンを掲げる「ソーシャルフットボールクラブ」をうたう。昨年、運営体制を整えるため事業主体となるPLAYNEW(渋谷区円山町)を設立すると共に、Jリーグへの参入を目指すことを発表した。
チームには元Jリーガーの阿部翔平選手などが所属しているのも特徴。現在はJリーグ1部(J1)から数えて8部に当たる東京都社会人サッカーリーグ2部(都2部)に所属し、最短で2025年にJリーグ(J3)参入となる計算。昨年度は10勝0敗3分という好成績を収めながらも得失点差でブロック2位(ブロック1位が都1部に昇格できる)となった。今季はリーグ戦を5勝1分の首位で終え、12月に優勝・昇格決定戦を控えている(ライブ配信を予定)。
山内さんは昨年のJリーグ参入への構想を発表した当時から「渋谷シティFC」に改称することを考えていたというが、「勝手に渋谷からJリーグを目指すと言っている人たちが渋谷を名乗っている」など、「他人事に見られてしまうのは嫌だったし、もったいない」と判断していた。
昨年の構想発表以降、街の清掃活動、小学校などでのサッカー教室、街のイベントへの参加、区内のベンチャー企業を対象としたフットサル大会など、区内での活動を昨年は96回するなど強化した。そうした活動を通して街の人たちとも触れ合う中で「なぜ東京を名乗っているのか」「渋谷にしてもいいのでは」という声を受け、「踏ん切りが付いた」と年始には改称を決意。選手たちにも相談したというが、7年使ってきた名称のため「寂しい」という声はありながも、「渋谷のクラブだし、すごくポジティブなのでは」と好感触だったという。
ホームタウンを広げるために、都市名から都道府県名にクラブ名を変えることはあるが、その逆は「あまりない」と言う。それでも渋谷は「東京と同じくらいのブランドイメージ、パワーがあるのでは」と山内さん。グラウンドの問題はあるが、代々木公園に3万人規模のスタジアムをつくるプロジェクトが立ち上がっていることもあり、「リスクはあるがデメリットではない」と考える。代々木公園にスタジアムが完成した暁には、「そこでプレーするのにふさわしいチームになっていたい」と意欲を見せる。
改称と同時に、「新しい時代の新しい価値観」として、「ソーシャルインパクトを追求する」クラブ運営をしていくことも発表。「未来の世界の縮図」であり「カルチャーの発信地」であることから、「渋谷を世界一ワクワクする街にする」ことを目標に、サッカーを中心としたスポーツを通じたまちづくりに挑戦する。
具体的な成果指標やロジックモデルは、来シーズンの開幕時期をめどに発表、運用開始を予定するが、大事になるポイントとして「共通言語」と「共通体験」を挙げる。「サッカー(スポーツ)という共通言語を通じて、街の人たちが共通の体験をできるイベントをつくることで、区が基本構想でも掲げている「『ちがいを力に変える』きっかけになるのでは」と考える。
山内さんは「今までは、Jリーグに上がることや、渋谷を世界一ワクワクする街にすることはクラブの人間たちが描いていた夢だったが、渋谷の人たちの夢の一つになれたらうれしいし、一緒に歩んでいただきたい」と呼び掛け、「あらゆる側面を切り取っても渋谷らしいと思ってもらえるクラブであり続けたい」と話す。
クラブの新しいロゴや来季のユニホームは12月に発表予定。