3月に閉館した旧東急百貨店東横店(渋谷区渋谷2)西館屋上で9月29日、本格的に始まる解体工事に先立ち、85年間にわたり同店を見守り続けてきた「東横稲荷神社」の御神体を新たな場所へ移す「本殿遷座祭」が営まれ、東急百貨店をはじめ東急グループの関係者らが参列した。
東横稲荷は、かつて渋谷川に架かる稲荷橋付近にあった「田中稲荷神社」(道玄坂にあった豊澤稲荷神社と合祀(ごうし)した現在の豊栄稲荷神社)からの分祀(ぶんし)。1934(昭和9)年の東横百貨店(東横店東館)開業時に、「将来にわたる繁栄」「安全」を祈願して、当時の東急電鉄・五島慶太会長が東館屋上の一角に祭った。以来、大きな赤い鳥居や立派なたたずまいから参拝する買い物客も少なくなく、駅から最も近い神社として親しまれてきた。渋谷駅周辺の再開発事業に伴う東館の解体工事で2013(平成25)年2月、隣接する西館屋上の一角に移設し現在に至る。東館時代よりもたたずまいは小ぶりになったが、毎月1日と15日に榊(さかき)を交換、毎年2月に金王八幡宮による「初午(はつうま)祭」を行うなど、東急百貨店社員らを中心に東横店を見守る稲荷神として崇敬されてきた。
御神体の新たな遷座先は東急百貨店の本社内(道玄坂2)。東急百貨店の担当者は「金王八幡宮のアドバイスの下、渋谷地区の当社建物の中で、本社内の一室が、神棚の方角等も含め御神体に遷座していただく場所として最適と判断した」と言う。従来のように屋外ではなく本社内に移るため、一般が目にする機会は無くなる。
当日は、東急百貨店の役員らをはじめ、東急、東急建設など東急グループの関係者らが参列する中、14時から金王八幡宮の神主がおはらいし、本殿から御神体を移動。15時ごろ、本社内に新たに設けた神棚に御神体を移す「遷座祭」を執り行った。
無事に遷座を終え、担当者は「(御神体に)これまで(85年間)お守りいただいた感謝と、今後の解体工事の安全、(将来にわたる)当社店舗の商売繁盛、事業安全を祈願した」と話す。