渋谷区と日産自動車(横浜市西区)、日産自動車販売(港区)が8月28日、電気自動車(EV)を活用した「災害連携協定」を締結した。
災害時、避難所でEVを活用して電力を供給し、被災者の避難生活の負担軽減を目的としたもの。日産自動車グループは2018(平成30)年から、EVなどを活用し地域課題の解決に取り組む日本電動化アクション「ブルー・スイッチ活動」を推進している。活動に基づき自治体・企業と災害連携協定の締結を進めており渋谷区は55件目(東京23区の自治体としては2件目)となる。
区は昨年10月ごろから公用車としてEV「日産リーフ」3台とEVから電気を取り出す可搬型給電器3基を導入しているつながりもあり、今回の協定を締結。区の避難所で災害を起因とする停電が発生した際、区の要請に応じて日産自動車販売店(恵比寿至近の白金店など)から試乗車として配備している「日産リーフ」を無償で貸与する。基本は1台としているが、状況に応じて複数台貸与。
日産リーフと可搬型給電器(最大4500ワット)をつなぐことで電力を供給できる。最新モデルの「日産リーフe+」のバッテリー(62キロワット)からは、スマートフォンの充電では6200台分、扇風機だと517時間、電気ストーブは62時間使える目安(接続機器により消費電量は異なる)。
長谷部健渋谷区長は昨年の台風19号発生時に避難所を開設したことに触れつつ、「停電などは無かったが、起きた場合の考えるとEVを活用することは心強く感じている」と期待を込め、「(EVが)活躍するような事態が起きないことが一番うれしいが、これから台風シーズンに入るし今年は新型コロナもありダブルパンチになる。今の時点からできる限りのことをやっていきたい」と話す。
日産自動車グループは昨年の台風15号発生時に日産リーフ53台を提供し、公民館や保育園などで初めて非常用電源として活用した。日産リーフは当初、「静か」であることや「加速性」などをメリットとして訴求してきたが、「走る蓄電器」としての普及活動を進めている。日産自動車の神田昌明理事は「EVがこのような使い方ができるのをまだまだ知られていない。災害時もそうだが、平時でも自宅の電気を供給することもできるので、そういったところも普及させていきたい」と話す。日産自動車販売の須山義弘社長は「(昨年の台風15号時に)防災対策としてのEVの価値を再確認した。無いに越したことはないが、万が一の有事の際には役立てていただきたい」と期待を込めた。
同協定ではこのほか、区のイベントで使う電力を電気自動車から供給することで区民へアピールし環境意識の向上を図る取り組みなどを行っていく。