渋谷駅東口地下で整備が進められてきた雨水貯留施設が8月31日、供用を開始する。整備主体者は渋谷駅街区土地区画整理事業共同施行者(東急、都市再生機構)、管理者は東京都下水道局。
たまった雨水をくみだすポンプや排水管と雨水が流入するドロップシャフト
駅周辺を中心に再開発(渋谷駅街区土地区画整理)事業が2010(平成22)年度から進められている渋谷。その中核となる「渋谷スクランブルスクエア」の建設工事と並行して、駅東口エリアの地上と地下も整備を進めている。地下では2015(平成27)年に渋谷川の再生と移設を行い、昨年11月には渋谷駅東口地下広場が一部供用開始となった。
渋谷は周辺がすり鉢状の地形で、駅はその底辺に位置するため豪雨時などに駅方向に雨水が流れ冠水することもあったことから「水害に強く、安全・安心なまちづくりの実現」を目指し雨水貯留施設を整備した。東京都下水道局はこれまで1時間50ミリの降雨に対応する下水道施設を整備してきたが、集中豪雨の増加に伴い、大規模な地下街では1時間75ミリの降雨へ対応する貯留施設の整備などを進めている。同所も大規模な地下街の浸水対策の一つに位置付けられ、2006(平成18)年度には先駆けて渋谷駅西口エリアの地下に神南貯留管(最大貯留量約4000トン)を整備している。
渋谷駅東口雨水貯留施設は2011(平成23)年2月に着工、2014(平成26)年8月に掘削完了後、本設工事に順次取り掛かってきた。新型コロナウィルスの影響で人員を削減し作業を進めるなどしていたことから、当初予定していた「東京オリンピック・パラリンピック前」の供用開始からは遅れたが、これから訪れる台風シーズンに向け供用を始める。
場所は渋谷駅東口広場のさらに下、最深部は地上から約25メートルに位置。広さは東西約22メートル×南北約45メートル、天井高は約7メートル。最大貯留量は約4000トン(25メートルプール×6レーン9個相当)。内部はいくつかの小部屋に分けられている。降水量によって水がたまる小部屋を3段階で使い分けられるようにし、使用後の掃除範囲を狭める工夫を施す。流入時の水流の勢いを抑えるドロップシャフト(らせん状の水路)を採用することで底部の劣化を防止。脱臭・換気設備も備えている。
貯留施設は1時間に50ミリ~75ミリの雨が降った場合に雨水のストックヤードとして使う。集水エリアは宮益坂や青山通り周辺で、既存のマンホールに加え新たに設置した取水ポイント5カ所から水が流れ込む。たまった雨水は天候回復後48時間かけてポンプでくみ出し、明治通り地下を通る既設の下水道幹線(古川幹線)に排水し下水処理施設に流れつく。1時間75ミリ以上の降水となった際は貯留槽が満水となり、浸水・冠水につながる。
渋谷駅街区土地区画整理事業では今後、東口ではバスターミナルの再配置(地上)を予定。その後、ハチ公前広場の拡充やタクシー乗降場の地下化など西口エリアの整備も控えている。2026年度に終了予定で、総事業費は631億円。