渋谷・ハチ公前広場のモニュメント「東急5000系車両(愛称=青ガエル)」が8月3日の明け方、新天地となる秋田県大館市に向け出発した。
東急電鉄が運用終了後に保存していた同車両を渋谷区が譲り受け、2006(平成18)年10月、広場の一角に設置。緑色の塗装と丸みを帯びた愛嬌(あいきょう)のある外観から「青ガエル」として親しまれた車両は1954(昭和29)年に製造され、16年にわたり渋谷~桜木町間を走行した東急5000系の先頭車。モニュメントの全長は11.22メートル、重さ約11トン。当初は青少年育成活動の拠点として活用し、2013(平成25)年6月からは渋谷区観光協会が外国人旅行者向けの「青ガエル観光案内所」として運営してきた。
移設先は、JR大館駅前に昨年5月にオープンした大館市観光交流施設「秋田犬の里」の芝生広場南側で、交流のモニュメントとしてハチを中心に渋谷と大館の歴史の移り変わりなどを紹介。座席シートは休憩場所として開放する予定。忠犬ハチ公像のモデルとなった秋田犬・ハチの生まれ故郷が大館市であることから、同市と渋谷区は2001(平成13)年、防災時における協定を結ぶなど都市間交流を行ってきた縁がある。
当初は5月~6月にかけて搬出・運搬・移転し、7月の供用開始を目指していたが、新型コロナウイルスの影響で延期となっていた。移転に向け7月10日から、渋谷区観光協会の専属デザイナー大橋祥さんがデザインしたラッピングを展開。イラストと共に「ありがとう」の思いを込め、「青ガエル、ALWAYS BE TOGETHER」のメッセージを掲出した。
移設に向け車両全体を青いシートに覆われた青ガエルの搬出作業は広場付近の交通規制を行い、深夜1時ごろに始まった。車両に重量物移動用のコロ8個を取り付け、何度かに分け車両を前方にゆっくりとスライドさせていく。広場の縁付近に達したところでパンタグラフをクレーンで外し、その後、車両の台座部分4カ所にワイヤーロープを取り付け引き上げると青ガエルは宙に浮いた。車両は信号機や標識などの合間を縫って90度回転した後、横付けされた大型トレーラーの荷台に収まり、夜が明けた5時16分、渋谷駅前交差点から大館へ向けて出発した。交差点には鉄道ファンの姿もあり、渋谷で見る最後の姿を見送った。
「全国的なテレビにもよく映る青ガエルが大館に来てくれるのはとても光栄」と話すのは大館市観光交流スポーツ部の工藤剛さん。渋谷区観光協会の金山淳吾理事長は「(青ガエルで運営していた)観光案内所は年間3万人の利用があった。今後も渋谷を訪れた外国人観光客にハチ公のふるさとを知ってもらい、ネクスト・デスティネーションとして大館市や秋田県に足を運んでもらえれば」と両都市間交流に前向きな姿勢を見せる。
青ガエルは3日間を要して大館に着く予定。