戦後復興の象徴として、わずか2年ほどの間、渋谷の上空に登場したロープウェー「ひばり号」誕生の背景と屋上遊園地の歴史に迫ったドキュメント「渋谷上空のロープウェイ」(柏書房)が4月に出版された。
ひばり号は1951(昭和26)年~1953(昭和28)年のわずか2年ほどの間、7階建ての東横百貨店(後の東急東横店東館)屋上と4階建ての玉電ビル(後の東急東横店西館)屋上を結び、山手線の上をまたいで運行された子ども用のロープウェー。その距離は75メートルで、定員は子ども12人。運賃は往復20円だった。
著者は、「幻の東京五輪・万博1940」「航空から見た戦後昭和史-ビートルズからマッカーサーまで」「1964東京五輪聖火空輸作戦」などの著書がある夫馬(ふま)信一さん。10年ほど前、日本の「失われたもの」を取り上げる本を作った際にひばり号に初めて出合った。残された写真がほとんど無かったが、「特別な空間である渋谷のど真ん中にこんなものがあること自体が理屈抜きに不思議でしかなかった。誰が、何で作ったのか」と「(頭に)引っかかっていた」と言う。
その後、アミューズメント産業の業界紙を作っている知人を経て、ひばり号を作った会社のカタログが「ポロッと出てきた」ことをきっけに書籍化に向けて動き始めたという。ひばり号を生み出したのはこの会社の創業者、遠藤嘉一(かいち)。同書では、遠藤の足跡を通じて屋上遊園地の歴史もひもといている。
ひばり号の存在について、夫馬さんは「ひばり号は渋谷の進化の象徴的な存在。こういう街でなければ(こうした)発想も出ないし実現も難しかった。2年ほどで消えたことも渋谷の変化の激しさを物語っている。良くも悪くも渋谷の象徴」と話す。
価格は2,200円(税別)。