渋谷・宮益坂下にある絵画材料・額縁専門店「ウエマツ」(渋谷区渋谷2)の路面に面したウインドーギャラリーで現在、妖怪「アマビエ」と「アマビコ」を題材にした作品が展示されている。
アマビエは江戸時代後期、肥後(現在の熊本県)の海中から出現し、「疫病が流行したら、私の姿を描き写した絵を人々に早々に見せよ」と予言を告げたことから、疫病など除災の妖怪とされる。アマビコも同種の妖怪として知られる。新型コロナウイルスの感染拡大とともに、SNSなどを中心に疫病を鎮めるとされるアマビエ・アマビコに注目が集った。
作品を手掛けたのは、1990(平成2)年東京生まれの美術作家・小林大悟さん。日本画の画材を用いた絵を制作・発表しているほか、室内の装壁画や絵本や雑誌の挿絵、ワークショップ講師なども手掛けている。半年ほど前に同店からショーウインドー展示の話を受け、日頃、動物をモチーフに描くことが多いため、今回もその延長線上で作品を考えていたという。4月7日に緊急事態宣言が発出される中、小林さんは「ウエマツさんもしばらく店を休むという連絡をもらい、人が呼べない事態の中で、予定通り絵を飾っていいかどうか悩みながら筆を進めていた」と心の内明かす。
搬入日まで2週間に迫る中、NHK Eテレの番組「日曜美術館」でアマビエ特集を偶然目にし、「今の渋谷に飾る絵はこれだ」と思い立つ。もともと民間信仰や庶民の間で親しまれた「(なまずを題材にした)大津絵やなまず絵が好きだった」と言い、仰々しくなく、あまり威張った絵にならないように気を付けながら「アマビエとアマビコ2匹を一緒に描いた」。作品の大きさは168センチ×182センチ。10日間でほどで仕上げた。
4月30日に展示を始めたが、外出自粛要請の状況下で「見に来てください」と大々的に言えず、場所を明示していなかったが、「渋谷にアマビエ様!」「アマビエ様ー!助けて下さい(泣)」(以上、原文ママ)など、ショーウインドー前を通りかかった人からSNSへの写真投稿が目立った。
「この状況でないと生まれなかった作品で、場所と機会を提供いただいたウエマツさんに感謝したい。アマビエとアマビコというモチーフにもお世話になった。人通りは少なかったと思うが、このような形で話題になって良かった」と小林さん。
同所での展示は5月30日まで。その後、当初は青山のユースホステルロビー内で展示予定だったが、新型コロナの影響で延期となったため、「もし展示したい店などがあればお貸ししたいとも考えている。この作品は人が行き来するような場所が似合っているので、気軽に連絡いただけたら」と呼び掛ける。