新型コロナウイルスの感染拡大で影響を受けた渋谷駅周辺の飲食店の支援を図るクラウドファンディングが現在、CAMPFIRE(キャンプファイヤー)で展開されている。
立ち上げたのは、自身のふるさとである青森の郷土料理を提供する「らせら」(渋谷区道玄坂1)の棟方ひとえさん。2013(平成25)年4月、それまで務めていたバーを辞め、独立開業。「人の温かさ」や「少し大人の街の雰囲気」などに引かれ、道玄坂上に同店を出店した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で同店はこれまでより8割来店客が減り、平日の来店客は4、5人程度だという。利用客の中には「ご飯を食べに行くことが悪いことをしている気になる」という声も聞かれた。周辺の店舗では「補助金や助成金の話が出る前に時短営業に変えたり休業したりした店が多く、新型コロナ終息への結束感を感じた」と言い、「人が歩いていない、店もやっていない夜の渋谷は真っ暗」と街の変化を語る。
同店は、スタッフに支払う給料などが発生することから時短営業を続け、テークアウトも始めた。来店客からは「何かしてくれれば応援できる」と声を掛けられていた中、棟方さんがクラウドファンディングを思い立ったのは4月12日のこと。誕生日の父親に電話したところ「とても心配してくれていた」と言い、電話を切る前の「みんな、頑張れな」という言葉を聞いた時に、「店を始める前からお世話になっていた飲食店の諸先輩方」が思い浮び、「みんなが頑張る時、みんなが協力する時だ」とクラウドファンディングの立ち上げを決めた。
棟方さんがインスタグラムでクラウドファンディングを始めることを発信したところ、発案2日で共感する店舗が10店集まり、その店がさらに他の店舗に声を掛け参加店が増えていき、4月27日のプロジェクトスタート時には約20店だった参加店は現在、42店まで増えた。
集まった金額は、キャンプファイヤーの手数料を引いた額を平等に参加店舗に分配する。支援のリターンには、好きな参加店舗で今後使える食事券を用意している。参加するのは道玄坂エリアの店舗が中心で、「らせら」のような郷土料理店やバー、居酒屋、イタリアン、ミュージックバー、ふぐ料理、タイ料理、お好み焼きなどカテゴリーも幅広い。
参加店は増えたが、プロジェクトに「自信がない」「年内まで持たないかもしれない」という理由で参加していない店もたくさんあるという。棟方さんは緊急事態宣言が解除された後も、「長期的に考えて飲食店のあり方も変えていかなければならない」と考えつつ、「プロジェクト終了後も渋谷のおいしい、楽しい店をたくさん発信していけるようにしていきたい」と話す。
プロジェクト公開12時間で目標金額の300万円を突破。棟方さんは驚きとともに「お客さまに愛されている店がこんなにたくさんあるんだ、とうれしく思った」と振り返り、「何より応援コメントが店舗の方々の心の支えになっている」と感謝の言葉を口にする。5月14日22時現在、635人から1,077万7,520円の支援が集まっている。
プロジェクト終了までは2週間を切った。棟方さんは「渋谷の街がまたにぎわいを取り戻せるようたくさんの店舗が踏ん張っている。テークアウトやデリバリー、リモート営業などいろんなことを試行錯誤しているが、本当は作りたての料理を店でいっぱい食べてほしい。酒を片手に『今日こんなことがあったんだよ』なんてたわいもない話を語り合いたい。安全・安心してまたお会いできる日を待ち望んでいる」と話し、「『食』と『人』を支えつないでいく飲食店は素晴らしい職業。今を乗り越えた飲食店は強いぞ!ご支援は店のパワーアップに!!終了後もどうか応援よろしくお願いします」と呼び掛ける。
5月27日(23時59分)まで。