工事中の渋谷駅西口地下施設で3月25日、ファッションブランド「KIDILL(キディル)」のファッションショーが行われた。
現在渋谷駅周辺の大型商業施設が参加し開催しているファッションとアートを発信するイベント「渋谷ファッションウイーク(以下、SFW)2020 Spring」のメインイベント。本来は観客を入れて行う予定だったが、新型コロナウイルスの影響で無観客にするとともに、ショーの様子はユーチューブで生配信した。
ショーの会場となったのは、2026年度完工予定で、今後タクシープールとして活用される地下2階の空間。赤い照明に照らされたコンクリートの空間に、ショーの始まりを告げるかのような鐘の音が鳴り響く。太鼓や篠笛、三味線など和楽器でパンクミュージックを奏でる「切腹ピストルズ」の演奏とともに、紫や青などの色やリーゼント、ウルフなどのヘアのモデルたちが登場。無機質な空間の中、赤や黄色、チェック柄やスタッズなどパンクの要素を取り入れたアイテムやパッチワークを施したエドウインのデニムなどキディルのコレクションが披露されていく。空間を縦横無尽に歩くモデルたちは切腹ピストルズを囲むように集まると、地下空間から渋谷の街に飛び出しショーは終了した。
これまで、街なかの道路や施設の広場などを舞台にショーを行ってきたが、工事中の地下空間を舞台にしたのは初めて。渋谷道玄坂商店街振興組合理事長でSFW実行委員長の大西賢治さんは「今までの積み重ねの結果、このような場所でできた。映画のワンシーンみたいで、いいロケーションだった」と言い、「100年に1度の工事の過程の中で、渋谷らしいファッションが発信できた。(工事中の空間でのショーは)前例が無いが、渋谷だからこそできた」と話す。SFW初の無観客でのショーとなったが、「やむを得ない事情だったが、いい意味で逆手に取り無観客にし生配信したことはインパクトがあったのでは」と振り返った。
同イベントでは、気鋭ファッションブランドのショーと同時に、参加する大型商業施設で働くショップ店員がモデルとなり、ブランドの「最新」ファッションを紹介するショーも行っていたが、今回は中止に。紹介予定だったファッションをまとめたルックブックは今後、参加施設で配布する。
当初は東京オリンピック(五輪)・パラリンピックに向けた街の賑(にぎ)わい創出を一つの目的に開催をしていたSFWだが、「五輪があるから終わりではなく、渋谷はファッションや音楽などカルチャーの発信基地なので続けていかなくてはいけない」と言い、「五輪も(延期になり)来年予定されているので、SFWももう一つ、プラスアルファがあるように進めていければ」意欲を見せた。