Bリーグ・サンロッカーズ渋谷(以下、SR渋谷)が3月15日、青山学院記念館(渋谷区渋谷4)で秋田ノーザンハピネッツ(同、秋田)と戦い84-79で勝利した。
シーズン終盤に差し掛かり、各試合の勝敗がチャンピオンシップ(CS)出場に関わってくる時期となった。現在東地区4位に位置するSR渋谷はCS出場圏内にいるが、同地区5位に位置する秋田や他地区のチームの影もちらつき「すごく危機感がある」(伊佐勉ヘッドコーチ(HC))。前日秋田に敗れていたこともあり、「今日勝たないとCSに行けない。何が何でも勝とう」(同)と臨んだ。
「(負けたら)ズルズルいってしまう雰囲気もあった」ことから「いつも以上にエナジーをもってやろう」とスタートで出場した広瀬健太選手は、スチール(ボールを奪うプレー)でチャンスを作ったりドライブ(ドリブルでリングにアタックするプレー)を仕掛けたり持ち前のアグレッシブさを見せた。「ディフェンス(DF)から流れを作る」というスタイルを体現するよう堅守を見せると、「特にオフェンス(OF)で何もしていなかった」前日を踏まえて「自分が試合に出る意義は得点を取ること」と積極的に「打とうと思っていた」田渡修人選手が得意の3ポイント(P)シュートを決めたり、速攻から野口大介選手のレイアップシュートをアシストしたりしてOFの流れを作った。
互角の戦いを見せた第2クオーター(Q)。「DFが相当良い」(伊佐HC)秋田相手に「ボールが止まるとDFにはまってしまう」ことからボールを早く前線に送り、「ブロックされてもいいからリングにアタックしようと伝えていた」(同)と言うOFが顕著に見られたSR渋谷。田渡選手は3Pに加え、「リングを見て決めきれた」とドライブでシュートコースが空いたのを見落とさずレイアップも沈める場面も見られた。DFではスチールやブロックショット(シュートブロック)など好守も見られ一時6点差を付けたが、35-37で前半を終えた。
後半立ち上がりは秋田に流れをつかまれ、最大で10点のリードを奪われた。その場面でコートインした石井講祐選手は前日13点差を逆転されたことを引き合いに出し、「付いていけばチャンスがある。一つ一つのプレーを意識」したと言う。オールコートDFでミスを誘発し、ライアン・ケリー選手がゴール下の得点を挙げたほか、「ボールと人を動かす」OFでフリーになった石井選手が3Pを沈めるなど約1分30秒で7点追い上げ2点差で最終Qに突入した。最終Q序盤もアグレッシブなDFを続けていたSR渋谷だったが、8分24秒でエースのベンドラメ礼生選手が個人ファウル4つ目となりベンチに下がることに。伊佐HCは「判断が一歩遅かった」と振り返るが、「勝負どころはオフィシャルタイム明け」と山内選手にその間をつなぐ役割を託した。その山内選手は「流れを変えられるDFができれば」とアグレッシブにDFをしたが、連続でファウルを犯してしまい自身も個人ファウル4つになったが「エナジーは見せられたので悔いはない」と振り返る。
残り3分46秒で6点差を付けられたSR渋谷だったが、3Pに加え得たフリースローを沈める4点プレーやドライブからのパスでファウルを誘発するなど石井選手がチームを引っ張る。さらに、「フリーだったので決めてくれるだろう」と広瀬選手の3Pもアシストし同点に追いついた。その直後の攻撃でも「当たっていた石井にDFが寄っていたのでパスが来ると思っていた」と広瀬選手が連続となる3Pを沈め逆転に成功した。流れを引き寄せたSR渋谷は残り51.1秒、DFで秋田のミスを誘発し、山内選手がレイアップを決め勝利を引き寄せた。ファウル4つの中プレッシャーを掛け続けた山内選手は「自分だけでなく、皆がプレッシャーを掛けてミスを誘発した。あれこそが今季のSR渋谷のチームDFを象徴していた」と振り返った。シュート時何かを気にしている様子を見せていたが、「広瀬さんが何か話していて、よく聞いたら『行け、行け』だった。DFが来ているのかと思った」と笑顔を見せた。
無観客の会場は「不思議な感じ」と話した田渡選手は、「声がすごく通るので、ベンチの役割はいつもより重要。盛り上げるのもそうだが悪い時に声を掛けるとか、ベンチからの助けで守れる時もあるので意識して声を出した。僕だけでなく若手も、皆が自然とできている」と話す。山内選手は「改めてファンの方に感謝の気持ちが芽生えたし、バスケットを見てもらうことで仕事や学校などへの活力になればと思っている。こういう状況でも全うしたい」とも。
他会場では1試合が発熱の影響で中止となり(新型コロナウイルスかは不明)、16日以降にリーグ、各クラブ代表者、選手会で今後の試合開催について協議することが決まっている。伊佐HCは「本当に難しいが、SR渋谷のHCとしてサインしている以上、所属するリーグのトップがやると言っているので、プロフとしてコーチとしての準備もするし選手にもいい準備をさせるのが仕事」と考える。選手たちは「不安はある」(ベンドラメ選手)、「複雑な気持ちもある」(田渡選手)としながらも、伊佐HCの言葉を受け「プロとしてバスケットを届ける義務がある」(ベンドラメ選手)、「切り替えた」(田渡選手)と前向きな姿勢を見せる。ケリー選手は「家族の心配もぬぐえないし、大好きなバスケの仕事ができていると言い聞かせる部分はあった」と言うが、「自分がどうにかできる事ではなく、辛いのは自分だけでなく皆一緒。また試合があればしっかり戦いたい」話した。
SR渋谷は次節3月21日・22日、アウェーで琉球ゴールデンキングスと戦う予定。