渋谷駅周辺の再開発による取り壊しのため3月31日で営業を終了する東急百貨店東横店(渋谷区渋谷2、以下「東横店」)で、「最後の古本市」となる「第29回 渋谷大古本市」が開催された。
全館イベント「85年分の東横総決算」の第3弾の一環。同イベントでは、東横店の「人気催事」を営業終了前に再び開催している。22年前に始まった大古本市は、一時年に2回開催していたが、会社員の男性の来場が多かったことから長期休暇時期に合わせ8月に行っていた。
今回は、渋谷に店舗を構える中村書店(渋谷1)や古書サンエー(道玄坂1)など、都内を中心とした古書店18店が参加し、約10万冊を用意。石田書房(千代田区)、虔十書林(けんじゅうしょりん、千代田区)は映画のポスターなど、古書窟揚羽堂(あげはどう、大田区)は怪獣などのソフビ人形、杉本梁江堂(りょうこうどう、大阪市北区)は浮世絵や版画など、各店が書籍以外のものも持ち寄った。各店が持ち寄った「渋谷」「東京」に関する書籍類を集めたコーナーや、漫画コーナーも作った。
古本市は平日始まりとなったが、初日のオープン前には150人ほどが並んだほか、営業中は男性客を中心に多くの来場者でにぎわいを見せていた。
古本市に参加する書店で構成する「渋谷代古本市会」の会長で中村書店の中村雅彦さんは「デパートでの古本市は減っているので、ありがたい機会だった。(普段)店に来るお客さんとも違う客層で、お客さんと触れ合える機会だった」と振り返る。
都内在住の梶原徳一さん(63)は日頃から古本を「よく読む」と言うが、同所の古本市に足を運んだのは初めてだった。東京出身で子どもの頃に東横店に来ていたことや、現在でも金王八幡宮のみこしを担いでいるなど渋谷に縁があることもあり来場。1時間以上見て回り江戸時代のことが書かれている本を購入した。
10年ほど前から同所の古本市に通っていたという西島保さん(72)は静岡から来場。地元の資料や地元の文学者の作品が載っている雑誌などを購入したと言うが、「あるとは思っていないものがあった。来て良かった」と笑顔を見せ、「新しくなったらまた来る」と新会場での開催にも期待を込めた。
同イベントの一環として2月27日からは32回目となる「福島物産展」が開催される。