再開発のため取り壊しが決まっている神宮前交差点の一角にあるビル「オリンピアアネックス」(渋谷区神宮前6)外壁に現在、環境美化を呼び掛けるアートウオールが登場している。
区内在住の小学6年生SAOさんが2017(平成29)年と2018(平成30)年に参加した、小学生が原宿の課題を見つけ解決策を提案する「Social Kids Action Project(以下SKAP)」での発案を元に、「落書き」という地域課題の解決を図るために行っている取り組み。
SAOさんは、通学路にある落書きが「怖くて気になっていた」と環境美化について調べるようになり、SKAPでは2年連続で環境美化に関する提案をしていた。2017年のSKAP後には町会の落書き消しに参加するなどしたが、その後、活動が停止。「小学生のうちに活動ができれば」とSKAPを主宰する植野真由子さんの後押しを受け再開し、形にした。プロジェクト名は、フランス革命勃発時に発表された人権宣言の中にある「自由とは、他人を害しない全てのことをなしうること」に着想を得て「渋谷自由革命」と付けた。
「いろいろな人に見てほしい」という思いや、「若者の流行に乗りたい」と、落書き抑止を目的に米スティーブン・パワーズさんが裏原宿のブロック塀に描いた「NOW IS FOREVER」がフォトスポットとして話題を集めたことをヒントに、フォトスポットとなるアートウオールを企画した。
アートウオールの設置場所は、SKAPの活動に賛同している東急不動産(道玄坂1)に提供を依頼し、再開発のため取り壊しが決まっている同ビルに決まった。「お子さんの言うことは、荒削りではあるが真意を突いていることが多い。大人の事情でやれる・やれないを言っていると、いつまでたっても街は変わらない」(東急不動産・小澤広倫さん)と協力した。SAOさんは12月中旬に同社の担当者と対面し、場所の確認やデザイン案などを決めた。その後、今年1月中旬に2日間かけて、下描きからペインティングまでを行いアートウオールを完成させた。
自身のタブレットを使い描いたデザインは、「きれいな渋谷」という言葉と共に、「検索してほしい」とSNSで美化活動の情報発信もしている「#渋谷自由革命」という文字を描いた。制作には、一般社団法人「CLAEN&ART」(宇田川町)やLONDONBOOTS(神宮前2)のキャラクターで、原宿でさまざまな「手伝い」をしている「カリィ」らが協力した。SAOさんは「想像した通りにできあがり、遠くから見ても目立つので、(近くを)通る度にすごいなと感じている」と喜びを表現する。
SAOさんは同時に、数カ月かけて活動のオリジナルソングを制作。ミュージカルを習っている経験を生かし作詞・作曲・歌を自ら手掛けたほか、動画も制作。現在SKAPのホームページなどで公開しているが、今後はゴミ拾いなどの活動をしている時などに流していきたい考え。活動を広めるためのノベルティー作りなども検討している。SAOさんは日頃から地域の清掃活動に参加したりマイボトルを持ち歩いたりしていることから、「細かい所から進んでやってくれる人が増えたらうれしい」と期待を込める。
2月12日には長谷部健渋谷区長が現地を訪問。「言ったことが形になるのはすごい。こういう体験をした方がいい」と話したほか、プロを交えたオリジナル動画のブラッシュアップに意欲を見せた。
アートウオールの展開は今月20日まで。21日には、再開発の着工に向け壁面に面した区道が封鎖される。