Bリーグ・サンロッカーズ渋谷(以下、SR渋谷)の広瀬健太選手が11月17日、7カ月ぶりに復帰した。
昨シーズン3月末に左ひざの前十字じん帯を損傷し、リハビリを続けてきた広瀬選手。自身のバスケ人生で長期間離脱したのは初めてで、「ベテランの年になって大けがをして復活するのは簡単なことでは無い。やりがいはあるのかなと前向きに取り組めている」と言う。この日は「試合に出る」と、前日の16日にも試合前にはチームメートと練習している姿が見られた。
復帰戦となったのは、ホーム青山学院記念館(渋谷区渋谷4)で京都ハンナリーズとの一戦。第1クオーター(Q)に1分42秒、最終Qに22秒の計2分4秒出場。短時間の出場となったが、場内のファンからは「健太」と名前を呼ぶ声が飛び、一際大きな拍手が送られた。「welcome back(お帰り)」と書かれたボードも掲げられていたが、広瀬選手は「うれしかったが、恥ずかしいので見ないようにしていた」と照れ笑いを浮かべた。
共にディフェンスからプレーが始まるタイミングでのコートインとなった。「今年はディフェンスのチームなので、言われていることをやろう」と臨んだ。第1Qには「チャンスがあれば狙ってやろうと思っていた」と3ポイントシュートも放ったがリングには嫌われた。「いい流れでボールが来たが、焦って打ったかな。もうちょっと落ち着いて打てば入ったのでは」と悔しさをにじませたが、「打てたことだけでも良かった」と前向きな姿勢を見せる。「調子は50%にも来ていないが、そこは試合に出て緊張感のある中でプレーしないと回復してこない」と話す。
広瀬選手はクールな印象があるが、試合会場ではゲームプログラムを持ってファンと一緒に応援する姿など、茶目っ気のある姿も度々見られている。この日のインタビューでも「昨日の夜もなかなか眠れなく…」と神妙な面持ちで話し始めたが「うそです(笑)」と場を和ませた。「若手が増えたので、絡んでもらいやすくしているところもある。いや素が出てきたのかな。そっちもトップフォームに戻せるようにします」と笑った。
広瀬選手はBリーグ初代「スチール(攻撃中の相手からボールを奪うプレー)王」に輝いており、ディフェンスには定評がある。伊佐勉ヘッドコーチは広瀬選手を「リーグでもトップクラスのディフェンダー」と評価し、「関野(剛平選手)と広瀬を交互に相手のボールマンに付けたら相当嫌なのでは。ディフェンスで貢献してほしい」と考える。加えて、ドライブ(ドリブルでリングにアタックするプレー)や3ポイントシュートなど多彩な攻撃もできる。「あのサイズ(=身長193センチ)でスピードもある。杉浦(佑成選手)や渡辺(竜之佑選手)に無いものを持っているので、そこも活用しながらチームバスケットにフィットさせられるようにしたい」と話す。SR渋谷は全選手でタイムシェアをしながら40分間戦うスタイルをとっているが、「タイムシェアがもっと難しくなるが、プレータイムを勝ち取って、出ている間はアグレッシブにプレーしてほしい」と期待を込める。
試合には出場したが、今後全ての試合に出場すると決まったわけではなく、膝の状態などをトレーナーと相談しながら出場機会を伺うことになる。広瀬選手は「逆に無理し過ぎちゃうと、もう一回けがするのは怖い」と慎重で、「けがをして初めて知ったが、復帰がゴールじゃ無い。ここからどれだけ自分トップフォームに戻していくか、ここから違うフェーズに入った感覚」と話す。「自分のバスケットの感覚を取り戻さなきゃいけないことはたくさんあるが、焦らず、でもゆったり構えるわけでは無く、必要以上に切羽詰まってやる必要ないかな」と冷静さも伺わせ、「(レギュラーシーズン)60試合を考えたらどこかで疲れが出て来る。その時に自分の力を発揮する場面だと思うので準備をして、おいしいところを持って行けたら」と目を輝かせた。