女性誌「ELLE Japon(エル・ジャポン、以下エル)」創刊30周年記念アート展「ELLE LOVES ART」が11月16日・17日、代官山の複合施設「KASHIYAMA DAIKANYAMA」(渋谷区代官山町)」で開催されている。主催は同誌を発刊するハースト婦人画報社(港区南青山3)。
記念企画を考える中で、「アートが持っている、見た時に(何かを)感じる強さとうまくコラボレーションすることで、ファッションだけではない(エルの)メッセージを広く知ってもらって、エンパワーメントできれば」(坂井佳奈子編集長)とアート展を企画。
「LOVE」をテーマにした作品が並ぶ「15の『LOVE』とオークション」では、同誌にゆかりのある人を中心にバリエーション豊かなアーティストら15組をそろえ同誌の世界観を表現した。
歌手としても知られる工藤静香さんの作品は、「LOVE」という言葉から想起した「柔らかいピンク、ホワイトの重なり合う花弁」をモチーフに描いた「溢(あふ)れるLove」。女優でミュージシャンのジェーン・バーキンさんは「愛用」のデニムと黒のタンクトップ、シャルロット・ゲンズブールさんは「サンローラン」のレザージャケットを出品している。ジュエリーブランド「AMBUSH(アンブッシュ)」のYOONさんは陶芸家・桑田卓郎さんとコラボレーションし、焼き物にジュエリーを装飾し「岩場から花が咲く」イメージで仕上げた。動物や植物を洋服に落とし込んでいるファッションブランド「MUVEIL(ミュベール)」のデザイナー中山路子さんは、シロフクロウなど絶滅危惧種の動物3種を描き下ろし、「自然のことや自分の置かれている立場を考えるきっかけになれば」と思いを込めた。
ファッションブランド「ANREALAGE(アンリアレイジ)」の森永邦彦さんは、1918(大正7)年創業の江戸小紋の染め工房「廣瀬染工場」(新宿区)の4代目・廣瀬雄一さんと初コラボ。「うつろって消えてしまうからこそ愛おしく思う日本人の情感を表現できたら」(森永さん)と、紫外線で浮かび上がる雲の模様を提案。「新しい挑戦だった」と振り返った廣瀬さんは、紫外線が無い場所ではのり(染料)が見えないため、ブラックライトで手元を照らしながら染めていったという。「出来上がった時に森永さんがいい感触を持っていたのは、すぐに伝わってきた。思った通りのものが染められたのは僕としても良かった」と笑顔を見せる。森永さんは「けっこう難しいと思っていたので形になって驚いた」と当時を振り返る。「服のディテールを洋服にする」コンセプトで、和服の襟部分を300%に拡大した丹後ちりめん素材のドレスに仕上げた。
社会貢献の意味とともに、「ユーザーが何かフィードバックできるよう、作品を見せるだけという一歩通行ではない施策ができれば」(坂井編集長)と、一部を除き、作品は同社のショッピングサイト「ELLE SHOP」で行うサイレントオークション(12月15日まで)に出品。売り上げは全額寄付に当てる。
森美術館の副館長でキュレーターの片岡真実さんがキュレーションする「彼女たちが見る世界――日本女性アーティストの30年」では、エルが30年の中で掲げてきた「エンパワーメント」「キュリオシティー」「ボイス・アップ」など5つのキーワードをテーマに日本の女性アーティスト15人を選んだ。
空間に糸を張り巡らせるインスタレーションで知られる塩田千春さんは、鉄枠の中の子ども用の白いドレスと張り巡らせた白い糸が絡み合った「存在の状態(子どものドレス)を出品。現在86歳の三島貴美代さんはシルクスクリーンの転写技法で印刷した後、手彩色してコカ・コーラゼロの箱とボトルを作った。
AKI INOMATAさんはミノムシの幼虫の習性を生かし、細かく切った女性の服を与えてミノを作らせた「girl,girl,girl,,,」。今回の作品には、「ソマルタ」「ヴィヴィアンタム」「アンスリード」の布を使っている。ファッション誌の企画ということもあり、「洋服が好きな方もいると思うので、ミノムシによってい洋服がこんな形にクリエーションされるのを見せていけるのはいいのでは」と期待を寄せる。
坂井編集長は「美術館に行って作品を見ることとは全く違うアプローチだと思う。エルのDNAを知ってもらいたいし、ファッションとアートの持っている目に見えない強さを体感していただけると思うので、気軽に遊びに来る感覚で、心が満たされるような思いになって帰っていただければ」と呼び掛ける。
開催時間は11時~20時。入場無料。