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渋谷「かつお食堂」が初の単独店 店主・かつおちゃん、間借り卒業し新たな挑戦へ

店内でかつお節を削る店主「かつおちゃん」こと永松真依さん

店内でかつお節を削る店主「かつおちゃん」こと永松真依さん

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 「前世は『カツオ』」と公言し、渋谷のバーの使っていない時間を間借りしてかつお節を削り続けてきた「かつお食堂」の店主、「かつおちゃん」こと永松真依さんが8月、渋谷・鶯谷町に初の単独店を出店する。

削りたてのかつお節がたっぷりのった「かつお節めし」定食

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 宮益坂を上り青山通りから一本入った場所にあるバー「bar&…miiiii」の朝の時間帯に、2017(平成29)年11月から営業を続けている「かつお食堂」。店内では、ねじり鉢巻き姿の永松さんが厨房(ちゅうぼう)に立ち、注文を受けてから丁寧に削るかつお節を、ご飯が隠れるほどのボリュームで盛り付け、客に出す。1日50食限定で、品書きはみそ汁・漬物とダシ巻き卵が付く「かつお食堂ごはん」が1,000円。みそ汁・漬物が付く「かつおめしごはん」は800円。好みで生卵(150円)などをトッピングできるほか、ご飯の大盛りとかつお節のお代わり(1回まで)は無料だ。

 かつお節を削りながら、産地や特徴などを語る永松さんの「ライブ」を楽しみに訪れる客も多く、開店前から行列ができる人気店が、新たなステージに踏み出すことになった。新店では「レアなものではなく、暮らしの中でもっと、かつお節やダシをおいしく楽しんでほしい」(永松さん)と、「暮らしとかつお」をテーマに掲げ、新たなメニューやワークショップなどのイベントにも取り組んでいきたいという。

 「将来的には世界の各地域のカツオの食べ方や文化も知って、多くの人にシェアしたい」とも語る永松さんが「かつお愛」に目覚めたのは、約7年前の25歳の時。週のうち半分以上クラブ通いし、いわゆる「パリピだった」頃、母親に促され帰省した福岡で、当時85歳だった祖母が削り器を取り出し、かつお節を削る姿に感銘を受けたという。

 「一つ一つのしぐさがすてきで、優しい祖母の中に芯の強さを感じてかっこよかった。実際に食べてみたらダシやみそ汁もおいしかった」と永松さん。運命を変える体験を経て帰京してからの行動は早かった。すぐにかつお節について調べ始め、行き先を決めず実際にかつお節を削って生活している人を探す旅に出た。次に、かつお節が作られている地域を訪れ、「(かつお節を)仕事にしたいというよりも、おいしいということを、ただ伝えたかった」と、まずはクラブでおにぎりのケータリングなどを始めた。

 永松さん自身がステージでかつお節を削るパフォーマンスでも知られるようになる中、「一番の魅力は『おいしさ』と改めて気付かされるような出来事も重なり、焼津(静岡)のかつお節職人の下で職人として働かせてもらった」のが約3年前。そこから、夜の活動を徐々に昼の時間帯にシフト。朝5時に起き家族に朝食を作り続け、食生活の変化に喜ぶ父親からの報告なども自信となったほか、縁が重なり、バーで自身の店を出すことになったという。

 現在の店では満席になることが多く、「待たせたくない。(食べずに)帰らせたくない」との思いが強くなり、独自の店を構えることを考え始めたのは今年に入ってから。物件を探す中、決まった出店場所は、渋谷と代官山の間に位置する鶯谷町だ。

 カフェやパン店などが軒を連ねる地元商店街「渋谷西郷馬車道通り商店会」に立つ新築ビルの地下1階で、店舗面積は約8.5坪。子どもも座りやすいよう、低めに特注したヒノキの「コの字」カウンターに11席を用意する予定。これまで同様、削りたてのかつお節をのせた朝食メニューを提供するほか、かつおダシを使った総菜も増やしていく意向で、「店内で削るかつお節は家でも食べてもらえるよう、持ち帰り用も売る予定」と話す。

 「渋谷はいろんな人が集まる街で、来やすい場所」と渋谷エリアに出店する理由を明かす永松さん。「かつお節産地と渋谷をつなぐ役割も果たせれば。『かつお節ナイト』や、茶道のように『かつお節道』を作る活動などもしていきたい」と、今後の展望に目を輝かせる。

 オープンは8月8日、営業時間は9時~を予定し、オープン後は夜帯の営業も検討している。現在のバーでの営業終了日は7月29日を予定。

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