11月に開業を控える大規模複合施設「渋谷スクランブルスクエア第1期(東棟)」に新たに設置された「大型デジタルサイネージ」の正式運用を目指して現在、実証実験が行われている。
デジタルサイネージは、今年1月に供用を始めた立体歩行者動線「アーバン・コア」の外壁一部にLEDパネルを設置。「ガラス張りのいびつな多面体」が特徴である同動線のデザインは建築家・隈研吾さんが手掛け、サイネージも隈さんに相談の上で、その独特なデザインに合わせて、サイズの異なる「2つの逆三角形マーク」が並んだような特殊な形状となった。
上辺は地上から約50メートルの高さに位置し、渋谷ヒカリエ側に設置された小さな逆三角形マークの大きさは156平方メートル、宮下公園側に設置された大きな逆三角形マークは623平方メートルで、2面合わせて計779平方メートル。
ただ、サイネージは東京都屋外広告物条例、および東京都の大規模建築物等景観形成指針で定められた既存の規制の範ちゅうを大幅に超える。渋谷駅周辺では、2011(平成23)年に都の認可を受けた「渋谷駅中心地区大規模建築物等に係る特定区域景観形成指針」に基づき、「質の高い個性ある景観づくり」が進められてきた。一方で複数の大規模開発が進む中、渋谷駅中心地区の景観を取り巻く環境も大きく変化し、まちの個性を生かした景観形成や昼夜問わずにぎわいを演出する魅力向上も課題とされてきた。こうした背景から渋谷駅中心地区デザイン会議を中心に2年前から協議を重ね、今春、従来の指針に「渋谷らしい夜間景観」「渋谷らしい屋外広告物」に関する項目を追加・変更。都条例に基づく特例許可を得て、今回の実証実験に至ったという。
デジタルサイネージの運営管理を行う一般社団法人「渋谷駅前エリアマネジメント」事務局次長の角揚一郎さんは「渋谷の玄関口を象徴する『のれん』のようなものを作りたい」と新しい取り組みに期待を寄せる。
実験は第1期(6月11日~21日)として、住宅街から見え方を調査する「街並み・生活環境への影響」、鉄道や車の運転者への見え方を調査する「交通安全への影響」、音や輝度による感じ方を調査する「来街者への影響」、災害情報の視認性などを調査する「情報発信の有効性」の4つの視点から、昼・夜間の時間帯で被験者のデータを収集。得られたデータを都に提出し、改めて特例許可が得られれば、10月から第2期実証実験として「まちづくりへの貢献」を目指し、広告媒体化できるかどうか調査を行う。広告収益は、エリアマネジメントが活動する渋谷駅周辺のにぎわいづくりや交流の創出、清掃活動など「渋谷のまちづくりのために還元していく」(角さん)という。